ネットに影響される人の日記

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影響されたり、観たり、聴いたり、食ったり。

映画2021年9月

9月が終わりました。8月分はこちらです。

htnmiki.hatenablog.com

 

9月、なにやってたんだろう、全然記憶にないなと思って9月のブログを眺めたら「いろいろやってるじゃん」となったのでブログ書いといてよかった。いやマジで私はどんどん忘れてしまうので記録が残ってないとあとから振り返ったときにその期間が無なんですよね。20代30代あたりは無です。いったいどうなってるんだ私の脳は。攻殻機動隊やレミニセンスを観たからこんなこと書いてるわけではないんだけどね。私が私であるために、ではないな、私が私であったことの証明がこのブログという感じかもしれない。というわけで9月分、行ってみましょう。

 

89. 白頭山大噴火
ディザスタームービーかと思ったらスパイ物で、スパイ物かと思ったら凸凹バディ物で、特にラストシーンで親指を立てながら溶鉱炉に沈んでいくシーンは涙無しには見られなかった、という感じの良作でした。北朝鮮と中国の国境付近にある火山、白頭山の噴火が始まり解析の結果マグマの圧力を逃してやらないと一帯全滅の危機でそれが可能なのは核爆弾くらいで、ちょうど北朝鮮が核爆弾を移送中だったのでパクって使っちゃおうというとってもシンプルなお話でした。でかい災害にはとりあえず核兵器使っちゃえみたいな映画界じわじわくる。成り行きで決死の作戦のリーダーになっちゃう人の奥さん(ペ・スジ)がめちゃかわでググったらインスタフォロワー1,600万人ですごい。とりあえずマ・ドンソクが強くない映画をもっと作ろう。


90. モンタナの目撃者
某所の書き込みで傑作「ウインド・リバー」の監督の作品だと知って観てみました。まあ予告編で気になってはいたんだけど。いやー、満足。不正を掴んだ会計士が、雇い主の検事が殺されたことから息子コナーを連れて逃走するも、殺し屋の手にかかり息子ひとりで逃げることに。一方、森林消防隊員のハンナ(アンジェリーナ・ジョリー)は山火事の現場で自らの判断ミスにより目の前で3人の子供が犠牲となり、メンタル不調で監視塔の閑職へ。この2人が出会うところから一気に展開します。緊張感がうまいというか、唐突ではなく、自然に袋小路へ向かわせるのが見事。そしてたぶん銃が好きだよねこの監督。アメリカ人はみんな好きなんだろうけど(暴論)、銃に詳しくない私が見ても省略せずにちゃんと撮ってるんだろうなと。結末は救いではあるけど問題は残ること、その不安と、不安だけにはしない希望も描かれて、「これで終わり」としないのも良い。大人と子供のバディ物はわりと誰でも作れるぶん逆に気を使いそうだけど、昨今の各種監視のまなざしにも耐えうる形でよく出来てるなと。ちなみにふと気になって調べたらテイラー・シェリダン監督の作品はほぼすべて2時間未満だった。個人的にはもうこれだけで信頼できる(なんだその基準は)。次回作も期待だなあ。


91. 先生、私の隣に座っていただけませんか?
後の予定までの時間潰しでとりあえず観たやつなのにめちゃくちゃ面白かった。柄本佑黒木華という間違いないキャストではあるんだけど。平和な漫画家夫婦かと思ったら妻の担当編集者と夫がなにやら怪しくて、妻が自動車免許取得のためには教習所に通い始めたらイケメン指導員といい感じになっちゃって、ちょうど連載が終わった妻が次回作のネームにこの辺のことをリアルに描いて、そのネームを夫が黙って見てしまい自分の不倫が詳細に描かれているため、あわせて描かれている妻の不倫も事実なのではないかと気が気でなく、このあたりから観客も夫に近い立場になるというか妻と指導員のあれこれが事実なのか、単に創作ネームの具現化映像なのか曖昧になってきて終盤までこのもやもやが続くのは上手いなと。で、最終盤の一触即発からのほっこりタイムで「なんだよ結局ぬるい結末かよ」と思ったら、みたいな最後の最後まで面白い作品でした。編集者の千佳、最高だな。面白くて怖い。演じてる奈緒って事故物件の人か。上手い。唯一この役はちょっとというのが指導員。金子大地は上手いんだけど役柄が気持ち悪いというか結果オーライとしてもあんな指導員はさすがにきつい。


92. GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊 4Kリマスター版
近所の映画館サイトを見たら目についたので。関連作品はスカーレット・ヨハンソンのやつしか観てないので実質初体験ですかね。あれはあれで面白かったけど別物でした。なんとなくもっと昔の作品なのかと思ってたら95年なんですね。当時は興味なくて全然知らなかった。あれこれ言うと警察に怒られそうだけどとにかく面白かったなー。テレポートで元の人間を完全に再構成した場合に本人と言えるのか問題と同様に、人を人たらしめる記憶を外部保存したときに人のかたちをしたものを人と呼べるのか問題も面白いし直近の課題はむしろこっちだろう。飼い犬に噛まれるネタはあるあるだけど911前の作品を911後に観るのも面白い。とりあえずもっかい観たいですね。地味に気になったのがバグとネットのアクセント。最近はどちらも尻上がりだから。


93. レミニセンス
攻殻機動隊を見た日に図らずも記憶を巡る物語でした。不確定な未来への希望を捨てた人たちに確定した過去の良い記憶に浸ることができるマシンで商売をするヒュー・ジャックマンが一目惚れした女性の記憶に翻弄される物語。その女性がレベッカ・ファーガソンならそりゃ翻弄されるわな。ヒュー・ジャックマンの助手の利用されっぷりがなかなかきつい。本人の意志とはいえさすがに扱いが悪すぎるだろ。私は未来に希望は持たないけど今この瞬間は新しいことを楽しみたいので過去に浸る暇はないな。


94. スクールガールズ
90年代のスペイン、修道院に通う少女たち、という作品だと知らずにてっきり少女たちのほっこり青春ムービーかと思ったら激重でした。私は無信仰なので外野から言えることはないんだけど、思うことはある。特に子供が信仰を「学ぶ」ことの意味はなかなか難しい。自我すら怪しい多感な時期に神の存在は混乱するよなあ。この作品はそこへさらに未婚の母、母子家庭、貧困、悪い友達、反抗期などが重なる。大人のお母さんでも抱えきれないこの状況に娘をきつく叱りつけてしまう彼女を私は批判できない。一方で娘の疑問も正当だ。ラスト、母は娘にあなたはもう子供ではないと認めた上でこれが今できる説明の限界であることを告げる。娘はもちろん納得はできないだろう。しかし理不尽に抗う強さを得た。このふたりなら大丈夫だと思える終わり方だったと思う。


95. トムボーイ
傑作「燃ゆる女の肖像」のセリーヌ・シアマ監督がそれよりも前の2011年に撮った作品だそうです。ひとつ前に観た「スクールガールズ」と同じく少年のほっこりムービーかと思ってたらこれまた同じく激重でした。この日この2作品を続けて観て消耗が激しかった。引越し先で外に遊びに行った子が現地の子たちに入れてもらおうとしていたところに声をかけてくれた少女リザ。名前を聞かれて咄嗟にミカエルと答える少年。現地の少年たちとも仲良くなりみんなで遊ぶミカエル。その中でも現地の子たちとは少し雰囲気の違うミカエルを気にかけるリザ。少年少女の淡い恋の物語たまらんっすね。とはならないこの物語。少年ミカエルは体は女性で本当の名はロールという子供。引越し先で自分のことを知らない子たちに偽って接していた。両親はロールの志向を知りつつ女の子として育てたい。親には秘密で外ではミカエルでいるロールがある事件をきっかけに親バレ友達バレしてからが地獄。子供は無邪気ゆえに残酷。救いはロールの妹かな。まだとても幼いけどロールを少年でも少女でもなくロールとして見てくれる。また、バレたことで疎遠になるリザが最後に見せた表情は希望であってほしい。


96. マイ・ダディ
役者個人に色が付きすぎると何を演じても本人にしか見えなくなるのがつらい。一時期のキムタクとか藤原竜也とか。この二人はさらに突き抜けてとても良い役者になったけど。で、ムロツヨシ。私の中で過渡期。難しいよね。特にシリアスな演技は。ただ、そこはあえての起用だろうし本人の持つおかしみがスパイスにもなるのでそれはそれでアリ。なんて御託を並べてるけど、面白かったです。まあ子供と病気はずるいよね。おじさんは条件反射ですわ。そしてムロツヨシの周りの役者が素晴らしかった。奈緒は先日観た「先生、私の隣に座っていただけませんか?」でも良かったし、今回もいい演技だったなあ。娘役の中田乃愛、これまた逸材。また見たい役者だ。正直言うと、泣かせることを目的とした作品のあざとさはあるので苦手な人は多い気がする。そういう人はとりあえず中田乃愛だけ見ておけばいいんじゃないかな。また、実力派の中でも近年急上昇中の臼田あさ美が出てるのは俺得ポイント。5年前なら奈緒の役を臼田あさ美がやってそう。


97. ショック・ドゥ・フューチャー
70年代後半のフランスで駆け出しの女性ミュージシャン・アナが燻っていたところにローランドCR-78というリズムマシンとクララという女性ボーカルとの出会い刺激されアナの創作活動に光が射し込む物語。まず冒頭5分がかっこいいのでこれだけで元は取れた。考えの甘い若手にありがちな展開はわりと真面目に働いてるサラリーマンから見ると早く仕事しろよとか思っちゃうけど、学生時代をバンド活動で過ごした者としてはいまだに憧れがあるんだろうなと自覚するなど。思わぬ才能のクララとのセッションから一気に作品が作られていく瞬間は私までテンション上がる。その作品が重鎮に否定されたら私まで落ち込む。物作りする人は尊いので感謝しかない。ちなみに私が学生時代に買ったYAMAHAのQY70も名機のひとつですが、私は単にバンドサウンドのドラム代わりとしか考えておらず、それ以上広がらなかったなあ。宝の持ち腐れだ。そういや主演のアルマ・ホドロフスキー、とてもカッコよかったんだけど、アレハンドロ・ホドロフスキーの孫だとか。知らんかったわー。


98. 整形水
【グロ注意】でした。美醜のコンプレックスやルッキズムから逃れられない人たちの末路は悲惨だ。おそろしいおそろしい。その水に肌を浸すだけで粘土のように加工できてしまう商品「整形水」を使ってしまったイェジの欲望が際限なくなり、親にまで要求する姿は怪物そのものだった。外見のコンプレックスが無い私には到底理解できない部分だけど、永遠の課題なんだろうなこれは。まあとにかく怪しい商売には気をつけましょう。ちなみに終盤のシーンで「孤狼の血 LEVEL2」の上林を思い出しました。


99. ディナー・イン・アメリカ
超ファッキンクールな映画に出会ってしまい久々にブチ上がりました。最高だ。観る際の注意点だけど、ひとまず倫理観は捨ててくれ。そういうことじゃないんだ。パンクロックが唯一の救いである少女パティ。パティが敬愛するバンドの覆面リーダーであるジョンQをそうとは知らずに匿うことに。どんくさいパティにセクハラや差別は当たり前だが、ジョンQはいちいちそこに突っ込む。そんなのはおかしいと。そうしておかしなことにおかしいと言い続けてきたのがジョンQ自身。次第にパティも感化されていく。ところが感化されるのはジョンQも同様だった。世間に理解されないふたりが互いに人間扱いする/されることで生まれる絆。パンクロック、恋愛、逃避行、この映画で描かれるそれらが重要でないとは言わない。ただしそれ以上に、人が人として扱われること、見下さない見下されないこと、馬鹿にしない馬鹿にされないこと、人間らしく生きるためのそうした原則にキャッチーな肉付けをしたのがこの映画です。終盤、ジョンQの曲にパティの歌詞を乗せるシーンで見せるジョンQの表情がたまらない。「おまえはバカじゃない、二度とそんなこと言うな、パンクロッカーだ」自分はバカなのかと聞くパティにジョンQが言う。文字にすると臭いけど号泣シーンですよこれ。感想書いてたらまた観たくなってきた。Blu-ray買うか。ちなみにプロデューサーのひとりがベン・スティラーだとか。

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ではまた10月分で。

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