ネットに影響される人の日記

ネットに影響される人の日記

影響されたり、観たり、聴いたり。

映画2021年1月

1月が終わります。昨年12月分はこちらです。

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昨年4月に続き再び緊急事態宣言が発令されて映画館は20時までに終演することとなり仕事終わりに1本観るというのがギリギリ間に合わなくなってしまいました。なので土日祝日しか観れないわけですがこのところ仕事がアレで土日どちらか作業してたり祝日は無いものとしていたりなので誰か養ってください。というわけで1月分、行ってみましょう。

 

1. 燃ゆる女の肖像
年末見逃しシリーズです。結果的に年を越してしまったのは痛恨の極みですね。めちゃくちゃ面白かった。昨年は「はちどり」が優勝しましたが、本作を年内に観ていたら拮抗してたな。不本意な結婚のために先方へ肖像画を送ることになるが、お嬢様が先の画家には顔を見せず失敗。そこへ送り込まれた女性画家は画家であることを隠して散歩友達として振る舞いながら観察を重ねて描くことを指示される。当初は顔を見せない、笑顔を見せないお嬢様だったが……というお話。ここにお嬢様の母親と世話役のメイドも絡みます。親の言いなりで庇護されるか弱きお嬢様、ではなく芯の強い女性。仕事と割り切って来た、かと思いきや……の画家。ただの下働きに見えて実は……のメイド。物語の流れとしてお嬢様と画家がメインに描かれるんだけどこのメイドがとても良い役割を担っていて面白い。来て間もない画家がお嬢様が笑顔を見せないことを嘆くと「お互い様じゃね、フフッ」みたいに突っ込んだり、あることを自分で解決しようとしていたり、本作に出てくる女性がみんな心が強く描かれているのが印象深い。画家がお嬢様に「あなたのことはお見通し」的マウントするとお嬢様が画家に「私が描かれるとき何を見てると思う?」とマウント返しのシーンの緊張感最高です。本作はいわゆる百合モノだと思いますが「好き」や「愛してる」という言葉は使われません。そうではない言葉、仕草、表情、視線によって感情の昂りが渋滞してるかのような熱さがあります。本作の特徴として音楽がほぼ使われていません。1つ目は画家がお嬢様に好きな音楽として弾いて聴かせるヴィヴァルディの四季から「夏」です。わりと激しい曲で、ふたりの昂りを予感させる感じがたまらんですね。そして2つ目は祭りで参加者たちが自然発生的に歌い始め、次第に壮大な合唱になる民族音楽的な曲です。この曲とこのシーンがこれまた最高です。異なるリズムがだんだん重なっていく様はまるでケチャのようで、そこへさらにメロディーが乗ってきます。公式サイトによると既存の音楽ではなく本作のために作ったとか。この曲売ってほしい。ここまで書いたようにこの2曲は作中で奏でられるものであり、いわゆるBGMとしては使われませんが、たった1箇所だけ前述の「夏」がBGMとして使われるシーンがあります。静けさと激しさが衝突するシーンを「夏」の激しさが一段と盛り上げてくれるため最高オブ最高なシーンです。生で聴きたくなっちゃったのでチケットぴあで「ヴィヴァルディ」を検索したら1/9に第一生命ホームで東京ヴィヴァルディ合奏団による「四季」演奏会があったので即ポチしました。タイミング良すぎワロタ。(そのコンサートの記事はこちら


2. Swallow スワロウ
スーパー上昇婚をキメた女性がその格差からの抑圧される環境で精神を病み異食症を発症して初めはビー玉、次は画鋲などを飲み込んでは下から出して回収してコレクションしていくが妊娠したことがわかり病院でエコーで胎児を見て夫婦でニッコリしてたら医師が「なんか変なもの写ってね?」と気付き下から出てなかったブツが出るわ出るわの大騒ぎで晴れて病人認定されカウンセリングを受けて……というお話。ここにも既に嘘(事実ではないこと)が混ざっているような、このあともいわゆる衝撃の事実的なものが出てきてその度に気分が重くなるかなーりヘヴィな映画です。ラストシーンが見る人によっては救いのあるものだったりそうでなかったりする気がしますね。


3. おとなの事情 スマホをのぞいたら
面白かったー。エンドロールで「岡田惠和」と出てきて納得ですね。さすがに上手いわ。各国でリメイクされているイタリアのコメディ映画「おとなの事情」の日本版だそうです。3組の夫婦と1人の独身男性が年に1度集まり楽しい時を過ごすはずが、1人の提案から全員スマホをテーブルに置いてすべての着信を公開対応することに。結果的にぐっちょんぐっちょんのどろっどろになるんですが、ある意味最大の被害者と、被害どころか救われてるよねそれみたいな人との格差がハンパなくて、いやいやさすがに元通りは無理だろーと思いながらもなんとなくいい話っぽい気がしてくるのは脚本の腕ですかね。こんなのクソだ!という人も絶対にいるよねー。それも間違いではない。終盤に明かされるこの7人の関係の背景設定が少し雑な気もした。今回一番の驚きは鈴木保奈美の若さ。魔女かよ。そして東山紀之非モテ設定とか無理だろと思ってたらちゃんと非モテに見えるのは笑った。上手いなあ。チャラ男役の淵上泰史だけ知らない役者でしたがこれまた上手かった。クソだけどちゃんと空気を変える力を持ってるんだよね。さすがに大団円とはいかなくてもそこそこ年を重ねてきた大人たちは清濁併せ呑むことも覚えていくんですかね。いやーそれでも木南晴夏は救われないよなあ……


4. スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち
製作総指揮、ナビゲーターがミシェル・ロドリゲスってのでもはや100点が保証されてるのでは。めちゃくちゃ面白かった。スタントウーマンたちが活躍している作品本編がたくさん流れますが、その中でも自分が観たことの作品も結構あって懐かしかったですね。トゥルーライズで車からヘリにうつるシーンは改めて見てもゾクゾクするなー。肉体を酷使するスタントはもちろん見応え十分なんだけど、マトリックスのバイクアクションなんかも鳥肌モノ。改めて言われて「こりゃキツい」と思ったのが、男性スタントマンはズボンやジャケットスタイルで内側にパッドを付けられるけど、女性は脚や肩が出たスタイルが多くて膝や肘にパッドを付けずにアクションすることがあると。凄すぎワロタ。この映画がなぜ「スタントマン」という括りで男女を扱う作品にならなかったのかは観ればわかります。ハリウッドでの女性の扱いについてかなり初期からのそれに触れています。私は知らなかったのですが当初は映画界に女性役者や女性監督がたくさんいたそうですが、映画が金になるとわかった途端に男性が押し寄せてきて女性を排除したのだとか。そこから何十年もつまらない役をやらされる中で、それでも着実に実績を積み、「女性のわりには良いね」を実力でねじ伏せてきた歴史が振り返られます。同様に黒人差別についても触れられています。それらはいまでもハリウッドに残っているものであり戦いは現在進行形ですが、この映画でより多くの人たちに過去と現在を知り、とてつもなくカッコいい女たちがいることが広まるといいなあ。昨年観た「ようこそ映画音響の世界へ」と同様にこのような裏方モノを見ると、扱われている作品本編を見直したくなりますね。エンドロールに作品一覧が流れましたが多すぎて把握できなかった。公式サイトにも無いのでパンフ買えばいいんだろうか。


5. 恋する遊園地
子供の頃から通い詰めた地元の小さな遊園地で深夜の清掃バイトを始めたジャンヌが遊具ジャンボに恋する物語です。主役ジャンヌを演じるのは先日観て既に今年の優勝候補である「燃ゆる女の肖像」で強烈な印象を残したノエミ・メルラン。過干渉で男にルーズな母と二人暮しのジャンヌが母に恋バナをしたことから歯車が狂い始める。「普通でない」ことを抱える者がどう生きるかというのは本当に難しい。本人は何も隠さず、周りはあるがままを受け入れる、これが理想だよね。映画を観ながら、なぜ「ちょっと変わった子」をそのまま受け入れてあげられないのかと思う一方で、自分の子だったら冷静でいられるだろうかとも考えてしまう。ジャンヌが世間と自分のズレを認識せずにカミングアウトしたのは不用意だったと思う。とはいえ、じゃあいつならいいのか。擬態して生きるのは無難かもしれないが、それは生き方の否定ではないか。キチガイ扱いされるジャンヌに思わぬ味方が現れた瞬間私は泣いてしまった。ジャンヌがジャンボに八つ当たりするシーンは人間どうしあるあるで悲しかったなあ。わりと辛いシーン多めの作品だけど観てよかった。


6. アース・フォール JIU JITSU
アベンジャーズプレデターエヴァQ、カンフー映画全般、ドラゴンボール鬼滅の刃、これらは観た直後にメモしてたっぽい。面白い映画を観るとすぐに感想を書きたくなるんだけどメモしか残ってないということはたぶん面白くなかったんだと思う。シネマート新宿は久しぶりだなと思ってグーグルカレンダーを見たら昨年夏に「カラー・アウト・オブ・スペース-遭遇-」を観に行ってた。そして両作品ともにニコラス・ケイジで、両作品ともに奇作珍作。そろそろバイネームで避けてもいい気がしてきた……


7. 聖なる犯罪者
実話を基にしたポーランドの映画です。少年院を退院したダニエルは聖職者になることを望むが前科者は神学校に入れないため斡旋された製材所で働くことに、ならず製材所をスルーして教会へ立ち寄ったところダニエルのハッタリと住人の勘違いから司祭として滞在することに。スマホカンニングしながら告解を受け、少年院での司祭の言葉をパクってミサを行い、ぎこちないものの神学校を望むくらいの信仰も手伝い次第に村人たちの支持を得ていく。まがい物の司祭に救われていく村人たちを見ていると「司祭の資格とは」と考えてしまう。少しのきっかけと想定外の成り行きで思わぬポジションを得てしまう流れに渡辺淳一の「雲の階段」を思い出した。読んだのは20年以上前なので詳細は忘れてしまったけど、もぐりの医師の物語。彼の作品はこれしか読んでないが少なくともこの作品はめちゃくちゃ面白かった記憶がある。また、少し前に偽警官が捕まったニュースがあった気もする。とても愛されていた(偽)警官だったそうな。資格なんてクソ喰らえだと言うつもりもないし、救われた人に「その救いはまがい物ですよ」などと言うつもりもない。だからこそこういう作品が作られるんじゃないかと思う。ダニエルに気付き強請りにきた少年院での顔見知りが、ミサで聞いたダニエルの言葉に「おまえの言葉には信念がある」みたいなことを言ったシーンがとても印象に残っている。神はダニエルを赦すのだろうか。本作にあわせて公開されたこちらの記事も面白いのでどうぞ。


8. エマの秘密に恋したら
冒頭いきなりThe Go-Go'sのOur Lips Are Sealedが流れてきて傑作が確定しました。

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てのは冗談ですがゴーゴーズ好きにはたまらんすねー。最近だと「スパイダーマン ファー・フロム・ホーム」のエンディングにVacationが使われてましたね。私はゴーゴーズを見たくて2004年のサマーソニックに行ったので。懐かしいなあ。それほど人が集まってないゴーゴーズのステージにその後マリンステージでトリをつとめるグリーンデイのビリー・ジョー・アームストロングが乱入したのもいい思い出。彼はゴーゴーズ大好きだしね。って、ゴーゴーズの映画じゃなくて本作は定番のロマコメって感じでとても面白かった。エマが搭乗した飛行機が乱気流に巻き込まれ死を覚悟したエマは「まだあれもしてない、これもしてない、実はこんなひどいことを考えている、彼氏のクンニが下手」などなど平時では誰にも言えないようなことを隣の席の男に勢いで話してしまう。飛行機は無事着陸して後日出勤したらその男がベールに包まれていた自社のカリスマオーナーだった。ありがちな展開だけどこのエマのキャラクターというか役者の技量というかとにかく笑顔になれる。喜怒哀楽を過不足(たまに過)なく表せて、特に大きく笑う人は誰であっても魅力的ですね。セオリー通りいくつかのすれ違いもありますが待つだけじゃないし自己肯定感の低さも友人たちの支えで乗り切るしなんだかんだで環境が恵まれすぎじゃね? と思わなくもないけど映画なんだしそれでいいじゃんて感じですね。エマと元カレの会話「エマ、もしかして(アレのとき)演技してた?」「正直してた。クンニのポイントがずれてた」「どうすれば?」「(指と舌を動かしながら)ここをこうして」 失敗からちゃんと学べる男の未来に幸あれ。


9. KCIA 南山の部長たち
イ・ビョンホン5億点。いやすごいわイ・ビョンホン。以前から上手い役者ではあったけど、おっさんの渋みと哀愁が重なってハンパないことになってます。もちろん作品と役柄がマッチしたからというのも大きい。朴正煕暗殺事件の直近40日を描いた実話ベースのフィクションであることが冒頭に出てくるけど、大筋はこのままなんだろうと思われる。クーデターを起こして大統領になった朴正煕が、共に革命を成し遂げた盟友の助言に耳を貸さずに腐っていく様を止めようとする部下と唆す部下。権力者の周辺にありがちな確執を、逆に滑稽にも見えるほど無駄なくガチで描かれる様子に釘付けっすわ。まあこの辺も朴正煕政権が倒れたからこその描かれ方かもしれないという留保は必要なのかねえ。つくづく韓国は複雑な国だな。つい先日実刑が下された朴槿恵もよく大統領になれたよなあ。現実と映画の境界がわからなくなるわ。


10. ヤクザと家族 The Family
サラリーマンの父がシャブで死んで成り行きでヤクザに拾われたことから人生が回り始める物語。前半はいわゆるヤクザ映画の雰囲気で他社との抗争や自社内での嫉妬などあるある展開ですが、可愛がっていた後輩を殺された仇討ちで逮捕され14年の懲役を終えてからの後半は私が見てきたヤクザ映画の中で最も苦しくなるものだった。ヤクザを肯定する気は無いが、お上が社会へのメンツのために対ヤクザの法や条例を定めるだけで、生きる道が閉ざされていることの何の解決にもなっていないことが、社会の安定に繋がっているとは思えない。臭い物に蓋をしただけなのか。見逃していた「ヤクザと憲法」も観ないとなあ。本作は映画なのでこれでも綺麗すぎるのかもしれないが、例えばいま私が3年ルールや5年ルールを適用された場合にどうやって生きていけばいいのかわからない。「最後は生活保護」ですかね。出所後に事務所へ挨拶に向かい年老いた古参だけの組は時代の流れだとしても、中村の兄貴の堕ちた姿を見せられる場面では嗚咽が漏れそうになった。錚々たるメインキャストたちの中で磯村勇斗(木村翼役)の好演が光っていた。正直この人を知らなくて「なんか菅田将暉っぽいけどちょっと違う? いややっぱり菅田将暉?」なんて思いながら観ていたが、若くイキった役柄とマッチして、それでいて生まれながらに背負ったものが滲み出てしまう表情が素晴らしかった。父を知らない翼と父を知らない少女の邂逅は本作いちばんの見どころかもしれない。


11. プラットフォーム
目覚めたら48階層にいた男。中央を貫く穴が全階層に繋がっているとは。食事は上の階層の残飯が1日1回おりてくる。各階層の定員は2名。1ヶ月ごとに別の階層に移動する。みたいなワンシチュエーションのスリラーといったところ。下の階層の奴らに残してやるものかという勢いで食い散らかすため100階層に移動したらソースの一滴も残らないのでやることは1つ。ところがこのシステムの管理業務に携わっていた女が言うには、各階層が適量を食べれば最下層まで分配される量であると。この無秩序かつ弱肉強食の中で最下層まで食料を届けるには……と物語は進みます。なんかのメタファーとかあるのかもしれないけど私はよくわからないので単純に現実社会の鏡写しだなと。トリクルダウンなんて無いんだよと。極端なシチュエーションに見えてこの世界そのまんまじゃねーかと。はぁ〜やだやだ。人類は滅びるしかない。てのは冗談だけどなかなか夢も希望もないよねこれ。暴力描写もエグいのでR15+ですが、人肉の切れ端にボカシが入ってたのはそういうもんなんだろうか。目ン玉はダメとかあるのかな。

 

ではまた2月分で。

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