■原作
『音楽 完全版』大橋裕之(カンゼン刊)
■作・演出
西﨑達磨
■舞台美術デザイン
宮川俊正
■衣裳デザイン
島﨑光凜 / 本郷真衣
■照明デザイン
阿部柚葉
■ゲストバンド
カブトムシ
■会場
---
ろくに楽器も触ったことのないアウトロー高校生3人組が、思いつきでバンド“古武術”を結成する自宅の小規模ロックギグ奇譚―。
ドラム×1、ベース×2という珍編成で心まかせに“ボボボボボ”と演奏したり、
フォークグループの“古美術”というライバルと共に地元のロックフェスに参加させられたり、
かつてのティーンエイジャーなら誰もが望郷してやまない色鮮やかな音楽の初期衝動が描かれる。
毎年恒例の多摩美の卒業制作公演を観てきました。開演してからしばらくたって「あ、これアニメ映画化された『音楽』か」と気づくなど。映画はちょっと話題になってたけど松江哲明が関わってると知ってスルーしてたんだよなあ。上記のあらすじの通りロックの初期衝動がキーワードとなる作品でした。ロックと初期衝動は切り離せないしね。かくいう私もその初期衝動に突き動かされてギターを始めた少年でした。しかし、いろんなミュージシャンの初期衝動について読んだり聞いたりしていると初期衝動にも2つのパターンがあることに気づきます。雷に撃たれたような天啓タイプ、あの人みたいになりたいという憧れタイプ、前者は初めからオリジナル作品を作りがち、後者は既存の曲をコピーしがち、この傾向があると思う。で、私は後者の憧れタイプだったわけです。ひたすらコピーして満足はしているんだけど、どこかでオリジナルを作る人たちへの羨望や嫉妬もあるという面倒くさい奴です。そしてこの『音楽』は前者なんですよね。この壁を乗り越えるのはなかなか難しい。単に私が面倒くさい奴というだけなんですが。というわけでこういう作品を観ても「ちょっとよくわからない」が正直なところ。卑屈だよねえ。でもねえ、創作できずモノマネしかできない者は卑屈に生きていくしかないんですよ。「いや、卑屈になってないで作ればいいじゃん」みたいな正論はいらないんだよ。俺はクズなんだ。何の話をしているんだ俺は。まあこういう作品を観ると妬みと嫉みと憧れがぐっちょんぐっちょんになるんですよ。終わり。
★今年の舞台一覧