ネットに影響される人の日記

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影響されたり、観たり、聴いたり、食ったり。

12. 劇団普通『風景』

gekidan-futsu.com

■作・演出
石黒麻衣
■出演
用松亮、岩瀬亮、浅井浩介、安川まり、坂倉奈津子(青年団)、鄭亜美(青年団/ハイバイ)、岡部ひろき、泉拓磨、早坂柊人、青柳美希
■会場
三鷹市芸術文化センター 星のホール

 

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祖父の葬儀のため実家に帰省してきた“娘”は、祖父とだけ共有するある情景を思い出していた。祖父の兄夫婦の家にひとり連れていかれ、そこで丁重に椅子に座らされて「これはピアノの手だね」と言われたことだ。
最後まで二人だけで海辺の田舎町で暮らしていた祖父の兄夫婦と、現在子供の居らぬ“娘”夫婦。田舎に残り一身に親世代の期待を背負う“娘”の兄夫婦。
その周辺の、子供を持つがゆえの悩みを持つ者、持たないがゆえに悩む者。老いゆく親世代の中でも地元に残り支えてくれる子供を持つ者、年寄りだけで暮らす者。持つ者と持たざる者の葛藤を内包しつつ淡々とすぎゆく日々を全編茨城弁で描く群像劇。

 

劇団普通という名前がそういうことなのかわからないけどとても普通の物語でとても面白かった。爺さんの葬式に集まる子供たち(といってもおっさんおばさん)と孫。実家で爺さんと同居していた父子。母は出ていった。実家を出た者たちはそれぞれ家庭を持った。爺さんの遺産の話。兄弟間の出来の良さ/出来の悪さ。外からは見えないこと。内からは見えないこと。みんな都合よく考える。大切な人が傷つく姿は見たくない。自分が我慢すれば丸く収まる。結婚を出産を急かす価値観。生む人、生まない人、生めない人。介護要員としての子供。家族と家。あーこういうのうちにもあったわーとか、絶賛真っ只中だわーとか、そこらじゅうに転がってそうな話でうんざりしそうなところに全編茨城弁というアクセントで軽快感すら感じさせる仕上がりに思わず笑ってしまう。爺さんと同居していた利夫は遺産を食いつぶすボンクラで息子蒼汰は外野から心配されるという構図が一変する場面は罪悪感と爽快感でどんな顔していいのかわからなくなる。誰もがすべての当事者にはなれないけれど想像くらいはしたいと思う。山内ケンジの監督作「夜明けの夫婦」に出演していた鄭亜美、泉拓磨、坂倉奈津子が本作にも出演しており、その中でも両作品ともにちょっと面倒でほんのりエロい女がはまり役の鄭亜美が面白すぎる。もう少し違うタイプの役柄でも見たくなる。あと個人的に岩瀬亮が出る作品だいたい面白い説がある。そして劇団普通は要チェック。

 

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