ネットに影響される人の日記

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影響されたり、観たり、聴いたり、食ったり。

34. CCCreation Presents 舞台「沈丁花」

www.cccreation.co.jp

■脚本・演出
堀越涼(あやめ十八番)
■出演
山田真歩松島庄汰藤原祐規、和合真一、宇佐卓真、大沢健、渡邊力(少年Tの代役)
〈アンサンブル〉
今村航、酒井和哉、下野はな、竹内麻利菜、中野亜美、中野克馬、古川和佳奈、牧田優希(松崎貴浩の代役)
〈楽隊〉
吉田能(ピアノ)、中條日菜子(ヴァイオリン)、石崎元弥(ドラム)
■会場
KAAT神奈川芸術劇場

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雨。その姿は見えないが、その足音と気配がする。
この雨の正体は”化け物”である。
これから訪れる未曾有の水害を、まだ誰も知らないで居る。

油木正人(現代:大沢健)の事務所は今、激しい雨音と闇の中にある。

20年前。
旅行雑誌ライターの油木正人(過去:松島庄汰)は、偶然道に迷った先で「白花温泉」という名の小さな秘湯に辿り着く。そこで唯一の温泉旅館を営む早明浦やゑ(山田真歩)と出会う。
良質な湯に驚いた正人は取材を開始するが、温泉街にも関わらず観光客を呼び込む事

に消極的なやゑら街の人々。
同じく湯に魅了されたと湯治に通う新聞記者の滝里純(藤原祐規)。
沈丁花香る温泉街で忘れえぬ時間が始まる。

過去と現代、ふたつの時間軸はリンクしながら、正人の遠い過去の記憶を呼び覚まし、警報鳴り響く豪雨災害の夜とを繋ぐ。

 

居場所を追われた、居場所を失った者が辿り着いた聞いたこともない温泉街。油木はその湯に惹かれ何度も通う。しかしこの温泉は数年後にダムに沈むという。油木は憤るが観光協会理事長は既に受け入れている様子。そのうちにこの温泉で知り合った男がある日この温泉に関する「スクープ」があると言う。到底信じがたいことだが実は心当たりが無いわけでもない。男が言うにはこの温泉には若返りの効果があるとのこと。かつて郷の女が抱いていた赤ん坊が数年経っても赤ん坊のままであると。男はある事件を起こし郷の者と揉み合いになり崖から落ちてしまう。すると郷の者たちは男の体を湯に浸けた。混乱する油木に早明浦やゑは郷にまつわるお伽話を始める。という物語。これが過去パートで、現代パートでは大雨で避難勧告が出ている夜の雑誌編集オフィスで昔話をしている油木という構成。現代と過去の切り替えがうまくてとても観やすい。油木の白花温泉そして宿の女将やゑへの思いを動機として進む物語は若干のSF要素もありつつとてもロマンチックでありテーマもプロットもシンプルなだけに直球で突き刺さる。役者は皆素晴らしかったが特に早明浦やゑ役の山田真歩が「家」を守るための強さと弱さを極めて控えめな表現で演じる姿が絶品だった。そして本作の音楽はすべて上記の楽隊による生演奏。これがまた本当に素晴らしくてゾクゾクした。一部の効果音や環境音も表現しており本作の空気は楽隊が作っていたと言っても過言ではない。さらに演者たちが歌う「埴生の宿(Home! Sweet Home!)」がヤバい。しっかり歌える人をオーディションで集めたんだろうか。ちょっと歌ってみました的なクオリティではなくマジで鳥肌立った。まあ私は歌モノに弱くてチョロいタイプではあるんだけどそれにしてもこれはやられた。作品と歌の一体感がハンパないので、脚本を書いてそれに合う歌を探したのか、むしろ歌からインスパイアされて書いた脚本なのかという線も無くはない? などと思ったり。脚本家に聞いてみたいところ。作品終盤のキーパーソンとなる宿の三助を演じる和合真一、初めて見たんだけど不思議な魅力を持つ役者だったな。顔、声、体、演技、全部良い。男の私でもドキッとするくらい端正な顔は女性ファンが多いだろうなあ。そういえば客の男女比率が5:95くらいだったのはその辺もあるんだろうか。以前観た森田剛主演の「すべての四月のために」も女性客がかなり多かったけど今回はそれ以上だった気がする。そのへんの実際の理由を知りたいところ。今年の観劇はおそらくこれが最後となりますが良い締めくくりとなりました。まさか年の瀬にロマンチック大賞が出るとは。また来年もいろいろ観ていこう。

 

★今年の舞台一覧

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