ネットに影響される人の日記

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影響されたり、観たり、聴いたり、食ったり。

26. イキウメ「天の敵」

www.ikiume.jp

■作・演出
前川知大
■出演
浜田信也、安井順平、盛隆二、森下創、大窪人衛 、瀧内公美豊田エリー、大久保祥太郎、髙橋佳子、牧凌平、澤田育子、市川しんぺー
■会場
本多劇場
■あらすじ
ジャーナリストの寺泊は、食事療法の取材中、戦後まもない1947年に「完全食と不食」について論文を書いた医師、長谷川卯太郎を知る。卯太郎の写真が菜食の人気料理家、橋本和夫に酷似していたことで、寺泊は二人の血縁を疑い、橋本に取材を申し込む。菜食の料理家として人気を博す橋本のルーツは、食事療法を推進していた医師、卯太郎にあると考えたのだ。橋本はそれを聞いて否定した。実は橋本は偽名で、自分は長谷川卯太郎本人だと言う。
「長谷川卯太郎は私です。今年で122歳になる」

 

単一食、つまりある品目ひとつのみを食べ続けることで他に必要な栄養素は体内で生成されるはず、ということを実践する時枝という男と付き合いのある長谷川卯太郎は医師の立場を利用して人間の血液による単一食を実行する。飲血の効果は凄まじくあらゆる病気が治り永遠の若さを得ることができた。ジャーナリストの寺泊は妻が通い始めた料理教室の先生である橋本に取材を申し入れる。食に関心があるわけではない。妻がここに通う理由は夫つまり寺泊自身にあるから。寺泊は数ヶ月前にALSの診断が下っていた。菜食主義だのマクロビだの期待を持たせて人を騙す詐欺師を暴いてやろうくらいの気持ちでいた。しかし橋本の話を聞くうちにあまりに突拍子もない内容にもかかわらず五感で感じられるほどリアルな描写に混乱する。橋本は取材の終わりに不老に対する後悔とも諦めともとれる表情で「終わらせる」と寺泊へ告げる。寺泊は自身の病気と橋本の最後の言葉の間で何を思うのか。

 

たしか雑誌ダ・ヴィンチの連載だった「散歩する侵略者」でイキウメを知った気がする。ただし舞台には縁がなくてその後に映画「太陽」、映画版「散歩する侵略者」、「聖地X」あたりで触れることになる中でようやく舞台作品を初鑑賞となりました。禁忌を犯した者の末路は悲惨だおそろしいおそろしい、というよくあるテーマではあるけどとにかく役者が上手いし脚本は見せ場と抜きどころのバランスが絶妙だしいわゆる「舞台っぽい恥ずかしさ」みたいなものがまったく無くて完成度の高さに驚いた。各方面で評価されるわけだわ。いまさらすぎるけど要チェックですね、イキウメ。次回公演は来年の春過ぎにあるらしいですよ。そういや冒頭にガチの料理シーンがあって本多劇場に美味そうな香りがただよっていました。昼公演を昼メシ抜きで観たので腹の盛大に鳴いてしまった。

 

★今年の観劇一覧

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