シンプルにオススメの本教えて(ただし自身の立場から)
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山本弘の「アイの物語」をAIとロボット全盛の時代が来る前に読んでおいてほしい
2019/03/19 16:21
id:sds-page 氏のブコメで知った本を読んでみました。この増田に付いたトラバやブコメの中にはいろいろと興味をそそられるものがありましたがなんとなくタイトルでビビッときてしまったのがこれだったという感じです。
他人の感想や評価をあまり入れずに読みたいので特に調べもせずにキンドルストアでポチッとなです。文庫1冊の長編かと思ったら短編集でした。短編集は大好きです。サクサク読めますね。
短編1本ずつ感想を書くと無駄に長くなりそうなので少し長めの2本「詩音が来た日」と「アイの物語」に関係ありそうで関係ない少し関係ある話をします。
AI(人工知能)の話題でネタにされがちなことにシンギュラリティや汎用AIがあります。そもそも実現するのかどうかみたいな話がもありますがそれは無視しましょう。このあたりは適当なことを言うとAI警察が来そうなので怖いですね。
で、これらのネタで必ず出てくるのがAIに対する不安や恐怖です。この不安や恐怖がどこから来るのかと考えると「理解できない」に集約される気がします。
プロ囲碁棋士がAlphaGoに敗けてからだいぶ経ちますが少し前に公開されたAlphaGo vs AlphaGoの棋譜は「何をしているのかわからない」だったとか。この結果を受けてプロ棋士が不安や恐怖を覚えたのかむしろワクワクしたのかはわかりません。
しかしこれを人間一般に置き換えて「何を考えているのかわからない人」が目の前にいる状況を考えるとイメージしやすいのではないでしょうか。よくあるケースなら「初対面」とか。仕事でも友達関係でも初対面の人と話をするときはどんな人かわからないので恐怖とまではいかなくても多少の不安があったり、一方でちょっとワクワクしたりします、私は。で、何度か話すうちに少しずつどんな人かわかってきて、自分に合う合わないどちらにおいても傾向と対策を練りやすくなるので不安は解消されていきます、私は。つまり
- 知らないわからない理解できないは不安が生まれる
- 知るわかる理解できると不安は解消される
という単純な話をダラダラと書いてきました。で、昨今様々な分野で様々なな差別が問題となっています。人種、性別、セクシャリティ、出身、身体的特徴、職業、趣味、あげればキリがありません。そしてこれらの差別の根源には「私と違う」と「(わからないから)なんか怖い」の2つがあると思います。
ここでまたAIの話に戻ります。「詩音が来た日」、「アイの物語」ではAIに対する不安や恐怖も描かれています。AlphaGoの例もそうですが「結果的に正しい」としても人間はその過程が理解できないと安心感は得られないようです。
物語の中ではAIからの愛情を人間が感じ取っていますがその実体は人間はこうすると愛情を感じるというパターンをシミュレートしているだけです。そしてAI同士の間には人間には理解できない虚数iで表現される感情が存在します。では我々人間は虚数の感情を持っていないのでしょうか。
私がビッグマックを食べて感じた美味しいという感情をあなたは正確に理解できるのか、あなたが意中の人に微笑みかけられたときの喜びを私は正確に理解できるのか。多くの経験の中から擬似的に想像することはできても「正確」な理解は難しいでしょう。人間の感情は今のところ物語中のAIのように数式で表現できないので厳しそうです。
にもかかわらず隣人に対して不安や恐怖が無い(あるとしてもAIに対するそれよりは少ないでしょう)のはなぜか。自分と他人の関係における背景や文脈を共有して互いに知るわかることがたくさんあるからだと思います。
つまり差別の理由に「知らないわからない理解できない」があるならばその解消方法はわりと単純だという事です。ただ、この単純なことがなぜできないのか、どうすればできるのかがわからなくて困っちゃいますね。(丸投げ)
というわけでAIやロボットの小説から差別問題に触れてみました。中学生に差別問題について小論文を書かせたらこんな感じですかね。中学生ならもっと上手いか。まともに文章を書いてこなかった者の末路は悲惨だ。恐ろしい恐ろしい。
「はいはい何でもかんでも差別に結びつける活動家乙w」みたいに思われるのは構わないんだけどなぜこんなのを書いたのかというと、この小説を読みながら同時期にたまたま次の3作品を観たからというのもあります。
これらに共通するのは無知や無理解による差別です。キンキーブーツはブロードウェイミュージカルですからエンタメとして楽しめますが、ある少年の告白と主戦場は全然おもしろくありません。(低評価という意味ではない)
私は差別する人になりたくないと思っています。それでも無自覚な差別をたくさんしているだろうし偉そうなことは言えませんがせめて知ることくらいはやめずにいたいですね。
話は変わりますがいつも独特な文章でたくさんのネタを提供してくれていた清水亮氏がネットでの物書きをやめてしまったので寂しい限りです。彼のブログで知った「AIの遺電子」という漫画もAIを扱った作品でとても面白いです。