作:デヴィッド・リンゼイ=アベアー
上演台本:篠﨑絵里子
演出:小山ゆうな
ニューヨーク郊外の閑静な住宅街に暮らすベッカとハウイー夫妻。
彼らは8カ月前、4歳だった一人息子のダニーを交通事故で失いました。ダニーとの思い出を大切にしながら前に進もうとする夫のハウイー。それに対し、妻のベッカは家の中にあるなき息子の面影に心乱されます。そのような時にベッカは、妹イジーから突然の妊娠報告を受け戸惑い、母のナットからは悲しみ方を窘められ、次第に周囲に強く当たっていきます。お互いに感じている痛みは同じはずなのに、夫婦・家族の関係は少しずつ綻び始めていました。
ある日、夫妻の家にダニーを車で轢いたジェイソンから手紙が届きます。会いたいというジェイソンの行動に動揺を隠せないハウイーですが、ベッカは彼に会うことを決意します。
私は外国の作品と相性が悪い傾向があると感じていましたが本作は心に染みる作品となりました。悲しみ方は人それぞれでそのせいですれ違う悲しさという単純な物語だけどそれ自体が人間が抱える普遍的な課題でもあるので多くの人にとって身につまされるシーンが多いのではなかろうか。自分と同レベルの感情でないと不快に感じるということは経験あるんじゃないかな。よくあるのは趣味が同じでも熱量の違いで「にわか」扱いするみたいなやつとか。私自身はそのへんが不感症気味なのでよくわからないんだけど私自身に向けられることはあるのでちょっとわかる。対象が悲しみだと多くの場合は善意が向けられることになり善意は悪意より厄介なので人間関係がより複雑化しがち。人間が永遠の命を持っていたらいずれ学習するのかもしれないけどたがだか100年程度で死んで世代交代してしまうといくら教訓を残したところで他人事にしかならず同じ過ちを繰り返すという人間の限界。それでも生きていくからこうして物語が生まれ私が楽しんでいるので残酷なもんだな。
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