9月が終わりました。8月分はこちらです。
ようやくメンタル不調から上向きつつあります。長かった。とりあえずマイナスがゼロになるといいですね。そういや今年上半期に舞台やライブの出費がかさんだので下半期は自制するはずでしたがなんだかんだで気になる公演を見つけてはポチポチしてしまい老後2000万円問題から目をそらし続けている毎日です。皆さんは頑張って2000万円貯めてくださいね。というわけで9月分、行ってみましょう。
73. この子は邪悪
「マイキー」や「危険な遊び」や「エスター」あたりのクソガキ作品かと思って観に行ったらホラーっぽく始まってそう来たかと。交通事故にあった窪一家、父(玉木宏)は足に麻痺、母は植物状態、妹は顔に大やけどでマスクを被っている、花(南沙良)だけが無傷だったがそのことに負い目を感じている。一方、街には心ここにあらずで動物のように這い回る人がちらほら。母がその状態の純(大西流星)がその謎を負う中で心理療法士の窪(玉木宏)にたどり着き、動物状態の人たちが窪の診療を受けていたことが判明してから……というお話。設定というか核心となるネタはとてもおもしろかった。退行催眠で年齢を引き下げていき0歳のその先までいくと魂が揺らぎ取り出せる。ふたりに行えば魂を入れ替えることができる。オチは「そうなるよね〜」という感じだけどそれも含めて楽しめたかな。ただ、こうした突拍子もない設定を活かすためにはそれ以外の部分をもっと丁寧に作ってほしかった。寝たきりの母の件とか、住民票の件とか、かなり杜撰なのでもっと早くバレるだろと。とりあえず、性欲モンスターのうさぎが適しているとは思えないけどなー。そういや中学生くらいの女子集団が一列陣取ってキャッキャしながら見てたけどエンドロールで「なにわ男子」と流れてきてそういうことかと。おじさんにはわかりません……
74. ブレット・トレイン
むかしテレ朝深夜に放送していた「週刊地球TV」の「奇妙な果実」というコーナーを覚えてますか? 全編それという映画でした。トンチキな東京、トンチキな新幹線「ゆかり」、トンチキな米原駅、登場人物全員トンチキ、令和のトンチキ祭りです。そして運命のピタゴラスイッチからのスクールウォーズ。いまどきこんなデタラメな映画が作れるんですね。何か意味があるかといえばたぶん無いんだけど楽しかったからOKですみたいな作品でした。次々に現れる刺客それぞれいいキャラしてるんだけどホーネットはもう少し見ていたかったと思うくらいあっという間に消えてしまったのが残念。チャニング・テイタムの使い方がズルい。きかんしゃトーマスネタが多かったけど知ってると笑えたんだろうか。ジョーイ・キングがナイスおっぱいでした。冒頭に書いた「奇妙な果実」というかこれは日本であって日本でないので細かいところを突っ込むのは無粋かなあ。まあでも新幹線をナメられすぎてる気はする!(日本スゴイ教)
75. さかなのこ
「なんかの主人公みたいだな」ミー坊と総長軍団が釣りをした場所が他校の縄張りだったため抗争が勃発してひと通りやり合った後にミー坊をさして出たひと言が「なんかの主人公みたいだな」というわけです。まあだからこそこうして映画にまでなったわけで。原作となる「一魚一会」を私は読んでないのでどの程度の脚色なのかわからないんだけどたった2時間で振り返るにはあまりにハードモードな人生だろうことは容易に想像できるしそんな中での人の優しさにおじさんの涙腺は緩みっぱなしです。私は今回の人生では子育ての機会がなかったので来世の子育てではミー坊のお母さんを心の師匠とします。夏帆は大好きな役者なのでそれだけでも高ポイントですね。やさぐれ夏帆たまらんわ。沖田修一監督の前作「子供はわかってあげない」も素晴らしかったので要チェックですね。ただ、一点だけどうしても「うーん……」となってしまうことが。ミー坊がギョギョおじさんの家に遊びに行きたいと言ったときにお母さんが止めずにひとりで行かせたこと。結果的に「何も起こらなくてよかった」ではないしギョギョおじさんは連行されるし全体的にファンタジーなのにここだけ妙に生々しくてきつい。「子供を信頼すること」は「大人の責任の放棄」の理由にはならないかなあ。子育てしたことないからわからんけど。
76. シーフォーミー
視覚障害者のソフィが豪邸の猫シッターを請け負ったら依頼人の留守中に強盗が侵入して視覚障害者支援アプリ(スマホカメラで自分のかわりに見て指示をくれる)を利用して切り抜ける物語。このアプリでたまたま繋がった支援者ケリーがFPSの有能司令塔だったことにより的確な指示で侵入者に反撃していく様子はまさにFPS。このアプリはいろいろガバガバだとは思うけどなかなか面白い。セキュリティ(主に物理)が改善されればガチで使い道があるのかもしれない。盲目の戦いで「見えない目撃者」を思い出すけどあちらよりいろんな意味でスッキリしていてこっちのほうが好きかも。主人公がわりとクズというのもポイント高い。遠隔支援だと「THE GUILTY ギルティ」も思い出すけどあちらは音声だけが頼りなので本作のほうとっつきやすいかな。
77. 地下室のヘンな穴
戸建て購入を迷う夫婦に営業マンがこの家の秘密を明かすところから始まる物語。地下室のダクトを下りると2階に辿り着く。不思議はそれだけでなく営業マンが言うには「穴を下りると12時間進み、3日若返る」とのこと。空間の歪みと12時間進むことは実感できたが「3日若返る」が気になるところ。妻マリーは若返ってモデルとして活躍する夢のために繰り返し穴を下りる。数回程度では効果がわからない中ある日腐ったりんごを持って穴を下りるとりんごが腐っておらず確信を持ったマリーは狂ったように繰り返し穴を下りる。という感じで若さや美への執着により気が触れる作品としては「X エックス」や「整形水」などを思い出したり。妻マリーに誘われても穴を下りなかった夫アランは自然な老いを受け入れ生きていく。「女性は」と書くと主語デカだろうけどそうしたものへの執着は女性のほうが強い気もするなあ。ただし本作では夫アランの勤務先の社長が加齢のその先を見越して「電子ペニス」を導入することで男女のバランスを取っているように思う。まあ「女性は美」、「男性は性」というのもステレオタイプな気がするけどやはりそういう傾向ありそうだなあ。
78. アドレノクロム
TOCANA配給は地雷なので避けてるんだけど本作はTOCANAじゃないしポスターもかっこよかったので油断した。映画を観る際に事前情報はなるべく入れないし評価も気にしないんだけど映画.comで2.1、IMDbで4.6は伊達じゃなかった。マジでなんにもわからなかった。イラク帰りのウエストがキャッチの女に着いていったら怪しいドリンク飲まされてラリって人魚やサーフギャングたちによる猟奇殺人を目撃してヤクの売人の元締めに使われて元締めが囲ってる女のひとりボニーといい感じになって車と金をパクって逃避行してたら捕まって殺されかけたけど返り討ちにしてウエストはベニスビーチのギャングを制圧しましたとさ、という夢だったのさ、という物語なのか? とりあえずボニー役のJordan Monaghanがかわいかったのと囲われてる女たちのおっぱい祭りだったくらいしか見どころがない。まあ全部イラクの地獄のせいだといえばそうなんだろうなと。
79. LOVE LIFE
矢野顕子の「LOVE LIFE」という曲をモチーフに作られた作品ということを後から知りました。一言で表すと木村文乃の顔芸が光る作品ですね。顔芸という言い方はアレだけど彼女の表情に見え隠れする心の中がガンガン突き刺さってくるというか。そして冒頭から私の中の不快ボタンを連打されるのがかなりきつい。ホームレス支援現場のトラブル、連れ子再婚妻を中古品呼ばわり、次は本当の孫を、いやーきつい。中古品シーンの妻の言動はしびれる。ただ、感情の表現が控えめであることがじわじわ効いてくるので適度な爆発も時には必要なのかもしれない。元「幕間の女」山崎紘菜の演技がなかなか良かった。昔は正直見てられない感じだったけど本作では素晴らしい。聾者がキーパーソンとして登場してこれがなかなかのクソでワロタ。聞こえないことが物語のポイントでもあるんだけどそこを除いてただのクソというのがいいね。ラストは愛の形を問われるというか愛は理屈であり理屈でないという。以前観た深田晃司監督の「よこがお」も愛の形を描いた作品だった。
80. ビースト
密漁者たちが野生動物を狩る中でライオンにも手を出してしまい群れを分断されためちゃ強ライオンが激おこで人間ならお構いなしに殺しまくる映画です。昨年観た「ローグ」もそんな感じだったような。で、本作ですが、うーむ、どうなんだろ。襲われてナンボの映画なので襲われるシチュエーションが必要なんだけどそこへ至る段階が雑な気がしてモヤってしまった。ライオンの専門家があのようなふれあい方をするんだろうかとか、明らかな脅威にさらされた時に「一人で深追い」とか、ライオンの嗅覚をナメてそうとか、タイマンは無いだろとか。まあイドリス・エルバにダメおやじ役をやらせたのは褒めたい。しかし家族エピソードは無くてもよかったんじゃね。アメリカだとむしろそこがメインなのかなあ。(偏見)
81. 夏へのトンネル、さよならの出口
いやー面白かった。某所の書き込みを見かけなければ見逃してたので危なかった。望むのもがなんでも手に入るかわりに100歳歳を取るウラシマトンネルの噂を聞いた高校生の塔野カオルが辛い現実から逃げ出して迷い込んだ森の中に不思議な穴を見つけて中へ入り歩いていくとかつて飼っていたインコと小さい頃に亡くなった妹のサンダルを見つけてトンネルの外に戻ると1週間経っていたという物語。また、あるものを手に入れたい花城あんずと出会いウラシマトンネルの秘密を知られたことから共同戦線を張り時間の秘密をある程度調べた上で長時間の作戦を結構することになるが。ある意味では「未来で待ってる」「すぐ行く、走って行く」なんだけどそういう作品は結末まで描かずに想像の余地を残すのが王道な気もするけど本作は結末まで描ききって時間の経過を畳み掛けるシーンはゾクゾクしたしこれはこれでアリだなと。まあ結末のその後の現実的な問題は気になっちゃうけどそれはそれとしてまたひとつ夏のマスターピースが誕生しましたね。
82. 【ROMAN PORNO NOW】手
古臭い映画だなと思ったけどロマンポルノと銘打つだけあってわざと古臭くしてんのかなとか考えながらエンドロール見てたら原作小説が山崎ナオコーラで「あら若い人もこんな物語を書くのね」なんて思ったけどウィキペディア見たら「人のセックスを笑うな」が18年前で山崎ナオコーラは今44歳だと知って同世代だったのかと驚きつつ「いやこの世代としても古臭くないか」なんて思ったりしました。おっさんたちに性的消費されるくらいなら逆に性的消費してやれというスタンスでおっさんとばかり付き合ってきた女性が初めて本気になった同世代の男性に裏切られ傷つく物語です。一方で家庭内では距離を感じる父親との関係が外のおっさんたちとオーバーラップしつつ、娘→父、父→娘の素直になれない態度がもどかしくて家族の物語も気になるところ。ベタベタな描写が続くのでわりとさめて観ていましたが裏切り男が突然詩を披露したのはキュンとしてしまった。ああいう恥ずかしいの大好きです。いろいろ言ってるけどしっかりおちんちんが元気になりました。ナイスおっぱい。ナイス尻。
83. ヘルドッグス
とある事件を防げなかったことを悔やみ復讐だけに生きてきた元警察官・出月(後の兼高)が警察組織のスパイとなりヤクザ組織に潜入してトップが所有するファイルを奪う物語です。チンピラに喧嘩売って「おめえやるな」「おまえもな」的な感じで兄弟分になるのは笑うけどどこれが明かされるのがラストシーンなのでちょっとじんわりくる。展開が早くてある意味で主人公も騙されていて最終的な相関図がかなり入り組んでいるので事前確認したほうがいいのかもしれない。岡田准一のアクションは安定ですね。かっこいい。この映画、知らない役者がめちゃくちゃかっこよかった。兼高にスパイ行為を依頼した警察側の阿内(酒向芳)が素晴らしい。出演歴によると見てるはずなので悔やまれる。ヤクザの会長秘書・熊沢(吉原光夫)も良かった。ミュージカル畑の発声はさすが。はんにゃ金田が髪型のせいか若かりし鳥肌実に見えてワロタ。良い役どころだったな。正直浮いてる感があったのがヤクザ会長・十朱(MIYAVI)なんだよなあ。どうしてこうなった感がある。なお原作がはてなーらしい。
84. 雨を告げる漂流団地
感想書き忘れのため鑑賞時のメモのみ。脚本に森ハヤシ、父兄歓喜。漂流教室。なつめ、稀代のワル、悪女、メンタリティが小学生だと違和感、せめて中学生か。れいな、こんな汚いところ、差別。じゅり、常識人、理性的。のっぽくんは連れて行こうとするのに「やしまの人」は放置かよ。
85. LAMB/ラム
田舎で暮らす羊飼いの夫婦二人のもとに羊でない何かが産まれ育てともに暮らすようになるがその何かは一体何者なのか。アダと名付けた夫婦は本当の子供のように愛情を注ぎ育てる。家の外で羊が鳴いてうるさい。母羊のようだ。一方アダは鏡に映る自分の姿に何かを感じる。墓参りにアダを連れて行くが墓に刻まれた名前はアダ。夫婦の飼い犬と飼い猫は何かに気づいているのか。いやーなかなか不思議な物語でしたね。神話や宗教的なモチーフがあるんだろうか。いわゆる托卵みたいなことであればアダの母親の件は無くても結果は変わらなかったのかな。それとも単に奪った報いということなのか。超展開キタコレ! と思ったら終わってしまったのでそのへんは闇の中へ。物語をどこまで描くか・どこで終わらせるか問題は永遠の課題ですが本作はこれでよかった気もする。
ではまた10月分で。