神奈川県のはずれ。
駅前の繁華街以外は寂れ、奥には山ばかりが広がる田舎町。
真夏。
リサイクルショップを経営する手島(大森南朋)は、アヤしげな自称・映画プロデューサーのマルセル小林(田中哲司)とつるむ以外、特に楽しいこともなく、日々しけた店を切り盛りしている。
従業員は態度のでかい出口(荒川良々)と、やる気ばかりで空回りの木村(清水優)の二人。
彼らの楽しみは飲みに出て、キャバクラでマイカ(門脇麦)や美由紀(新井郁)ら女の子をからかうことくらいしかない。
ある日、郵便局員の節子(あめくみちこ)から「父が死んだので家を整理し、不用品を引き取って欲しい」という依頼が。
手島たちは節子の家と蔵を物色するが、木村が蔵から意外な「もの」を見つける。
山から時折聞こえる銃声。
増え過ぎた鹿が農家の作物を荒らし、その被害が深刻化しているため、他県からも猟師を募って害獣駆除をしているのだという。
手島とマルセルの抱えた「事情」と木村がみつけた「もの」、そしてマイカの切実な望み。
退屈な日常はふとしたはずみで軋み、歪み、彼らは暴走し始めた。
出演者たちの絵面が強い。それだけで観てきました。といいつつ実は希望日時のチケットが取れなくて、ポッと時間の空いたこの日にとりあえず公式ツイッターを見たら当日券がそこそこ出るっぽかったので暇だし行ってみたら難なく買えてしまったという感じ。田舎の閉塞感、チンピラにもなれない者たち、出自に事情を抱える者、コンプレックスだらけの者、馬鹿でピュアな者、感情に疎い無敵風の者、貧すれば鈍する者たち、どこかで見覚えのあるこれらの設定も生で観るとそれなりに刺さるの私はチョロいなあ。映画「そこのみにて光輝く」を思い出すのは単純すぎるか。基本的に私の人生に関わることのなかった世界の話なので共感するような部分はほとんど無いんだけど、誰にも気付いてもらえない美由紀(新井郁)の闇が序盤から刺さりまくってかなり沈んだ。会話が多ければ多いほどそれがキャッチボールになっていないことそしてそのまま流れていくことの不穏な空気が漂い続けて終始苦しかった。ここから人生が始まる節子(あめくみちこ)を誰が責められようか。出口(荒川良々)怖いなあ。怖い。門脇麦は「わたしは真悟」で見たのがもう5年前か。童顔だからあんまり変わらんな。本作の結末はちょっとやり過ぎ感があったけどこの役者陣の作品を観れたのはいい経験になったかな。
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