1人の新人女優・堀美晴が亡くなった。そのために暗礁に乗り上げていた映画の製作が、全員の「この映画を完成させなければ!」という思いで、クランクインの時を迎えた。
堀美晴の葬儀は撮影所内でごく内々にすませられた。監督の別荘の湖に溺れて死んだ事故となっていたが、真相はよくわからないままだったのだ。事故ということになっていたが、彼女が事故当時もっていたはずのお気に入りだったポシェットが見つからないことなど、本当に事故なのか、あやふやな状況だった。しかし、映画を完成させるために、動き出さなければならない。そんな状況下での撮影だったため、監督・並之木顕之(眞島秀和)の殺気だった緊張感に満ちた指揮ぶりは常軌を逸していると言ってもよかったろう。今や飛ぶ鳥を落とす勢いの主演女優・羽田ゆずる(秋山菜津子)にも容赦ないダメ出しが飛ぶ。そんな中、プロデューサーの紹介でそれなりの役に抜擢された女優ジュン(吉高由里子)が徐々に存在感を増してくる。
撮影のために世間から隔絶された場所で、主演女優、マネージャー(富山えり子)、ベテラン女優(伊勢志摩)、若手女優(石橋穂乃香)、それぞれの思惑と、監督への愛憎が次第に彼を追い詰めてゆく――。 堀美晴は殺されたのか、だとしたら誰が彼女を殺したのか、、、映画の現場は次第に混沌としていき、そしてやがて悲劇的な結末を迎える―――。
どこかのメディアの記事でなんとなく面白そうだったので観てみようと思ったけど既に土日は完売してたので平日夜のチケットを取ったらちょうどその日の日中に吉高由里子の東京ドラマアウォード主演女優賞受賞が発表されたようでそんなこともあるんだなと思いました。で、本作です。もはや数えるのもやめたM&Oplaysの岩松了作品。初めに言ってしまうけど今回の物語は正直あまり刺さらなかった。女優の事故死により頓挫した映画製作の再開、死因の謎、ベテラン女優の焦燥、勝ち気な若手女優、怪しいド新人、てな感じでテレビの2時間サスペンスで散々見てきた感じなので物語的に目新しさを感じられなくてもう少しこの作品ならではな部分を見てみたかった。ただし舞台の最大の魅力はそうした物語でも目の前で役者たちがノンストップで演じる姿を見れることにあるので大抵の場合は結果的に観てよかったと思い帰路につくのです。今回もそのパターン。特筆すべきは勝ち気な若手女優役の石橋穂乃香。デビュー当初は「はいはい七光り乙」的空気が確かにあったと思うしそれ以降特に興味をもつこともなかったのでいま役者として活動してることすら知らなくてなんなら本作のチケット購入時も名前が目に入ってなかったんだけど本作のMVPは石橋穂乃香なのではと思うくらい良い演技をしていたので驚いた。こういう発見は嬉しい。怪しいド新人の吉高由里子は世間が持つだろう吉高由里子のイメージにかなり近い感じで笑った。贅沢言うならまったくイメージに無い役柄も見てみたいけどこれはこれでとにかくハマっていて可愛くて目をかけたくなるけど何かを秘めていて空恐ろしい女がそこにいた。年齢的にもそういう役をいつまで出来るかわからないけどいつまでもやっていてほしい気もする。秋山菜津子の全力コメディを見てみたい。物語はわかりやすいし全員均等に見どころがあって吉高由里子は可愛いので舞台ビギナーにもオススメできる作品ですね。東京公演は今週末で終わりだけどその後に静岡、大阪、名古屋があるので気になる方は是非。
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