ネットに影響される人の日記

ネットに影響される人の日記

影響されたり、観たり、聴いたり、食ったり。

映画2026年3月

2月分はこちら。

htnmiki.hatenablog.com

 

 

19. レンタル・ファミリー

日本で活動する冴えない「ガイジン」役者フィリップがとある現場で出会ったレンタルファミリー会社を営む多田に誘われ役者業は暇なのでやってみることになる物語。レンタルファミリーとはレンタル彼女(彼氏)の拡張版で家族に限らず「役割」を依頼されればやるというスタンスで時にはひたすら謝罪をする役割なども。ハーフの子を育てるシングルマザーは娘のお受験のためにフィリップを父親役で雇い有名小学校の面接に挑むがその過程でフィリップと娘にうまれる本物の親子のような絆が余計に周囲を傷つけることになるのはまあそうなるよねという感じだが血縁至上主義の人たちにどう見えるのか気になるところ。私はガキと大人の奇妙な関係が大好物なのでまんまと泣かされました。終盤のジジイパートはちょっと乗り切れなかったけどすべて忘れてしまう前に心残りを清算したいのはそれはそう。結局清算できずもやもやを抱えたままになることが昨年今年とあったので人生ままならないなと。多田の生活のアレはなんとなく予想はしていたけど正直蛇足感があった。全体的に都合よくいき過ぎだろという感じがあるのでそのテイストだけでいくのもアリかなと思う一方でそうするとご都合主義と批判されるしかと言って本作みたいに仕方のない現実を盛り込むとそれはそれで後味悪いし創作って難しいですね。

 

20. ウィキッド 永遠の約束

昨年の「ウィキッド ふたりの魔女」の続編です。前作ではグリンダとエルファバがくっついたり離れたりでいまいち信用ならないグリンダに対して若干のモヤモヤを抱えていたので本作での解決を望んでいましたが残念ながら微妙でしたね。この作品をふたりの友情物語と見るなら結末は辛いけどわかりあえてよかったねという良い話だと思う。ただし全体を俯瞰して見るとそれでいいんだっけ?良い話にしちゃって大丈夫?というモヤモヤがまたしても残るという結果に。だってネッサは殺されるしフィエロもとりあえず死んでるしそもそもエルファバ自身が望んだとはいえ社会的な評価はグリンダは善でエルファバは悪というバランスの悪さがどうしても気になってしまう。まあ古典?ともいえるような作品にケチつけるのも野暮なんだけども。まあケチつけついでに言ってしまうと美人で馬鹿な子とブスで賢い子の物語で各々の内面はさておき世間的には前者が善で後者が悪というわりと醜悪な状況というのがステレオタイプすぎるというか。もっと言うと散々上演されてきた作品をわざわざ現代に映画で作るならシンシア・エリヴォとアリアナ・グランデの配役を入れ替えてもよかったんじゃねとも思ったり。リトル・マーメイド(2023)でもいろいろ言われたしもはや別物として作ればいいのではと私も思ったけども現代ならそれくらい攻めてもいいだろとも思うわけで。とはいえ友情物語としては素敵だと思います。ポリコレ左翼フェミおじさんの感想でした。

 

21. 花緑青が明ける日に

代々続く花火職人のオビナタ煙火店。その家族とそこへ出入りする女の子。ある事故をきっかけに花火を作らなくなった父、事故以来引きこもり伝説の花火「シュハリ」の作成に没頭する弟ケイタロウ、市役所で真っ当に働く兄チッチ、ふたりの幼馴染カオルは東京の美大へ進学して新進気鋭の映像作家。チッチに嵌められてカオルが連れられたのは再開発の立ち退き要請を無視し続けて明日行政代執行が実施されるオビナタ煙火店。引きこもるケイタロウを説得して連れ出すように頼まれるカオルはケイタロウの思いに触れ……という物語。失われゆく故郷、逃げた者、守る者、わりと定番のプロットだけど無駄なく作られていてストーリーもテンポも良い。なにより映像がとても美しくてそれだけでも観てよかったと思える。なにより「シュハリ」は本当に美しかった。やりすぎた「シュハリ」の後がある意味現実的でおもろい。かつて水軍が敵勢を花火一発で退かせたという伝説の「シュハリ」で再開発を退かせることはできるのか。まあ現実はシビアなわけですがアニメくらい青臭くいたい。特筆すべき演出がひとつ、朦朧としたチッチ視点が実写ストップモーションアニメになり本来のアニメ映像とシームレスに繋がる場面は見入ってしまった。そして、実際にそうなのか、タイトルからの先入観でそう見える気がしたのか、全編を通して花緑青の色や緑や青っぽい色が多用されていたように感じてそれも美しさに寄与していた。

 

22. 私がビーバーになる時

動物そっくりのロボットに人間の意識を転送して動物や虫たちと会話できる仕組みを開発したマッドサイエンティストたちの物語です。というのは一部嘘で、大学生メイベルはビーバー型ロボットに入り込み動物の世界に飛び込むが弱肉強食のルールを破り弱者を救ってしまうがその中で動物たちが暮らす森や皮が都市開発で失われようとしていることを知り動物たちと協力して人間たちに挑む物語です。日本ではあまり馴染みのないビーバーですがどうやら生態系の維持に大きな役割を担っている動物らしく彼らが作るダムも動物たちの生活環境に欠かせないものらしい。環境にまつわる動物vs人間という構図は「平成狸合戦ぽんぽこ」からも影響を受けていると監督が語っているそうでおもしろい。なお本作はさすがアメリカという感じで動物側にはサメも参戦して飛んでくる様子はまさにシャークネード。本作もサメ映画にカウントされます。かわいらしいキャラクターで誤魔化されがちですがクソ真面目なネタに狂気やグロを混ぜながら大団円へ持ち込むのはさすがといったところ。信頼にヒビが入ったらまた埋めればいい。婆さんの言葉はいつの時代も真理です。ビーバーはバニラの匂いがするそうなので一度嗅いでみたい。

 

23. パリに咲くエトワール

第一次世界大戦へ突き進む1900年代初頭のパリで若き日本人女性ふたりが奮闘する物語。女に人権がない当時の日本でフジコは画家に憧れるものの親兄弟からはそんなことより花嫁修業しろと取り合ってもらえない。薙刀道場の娘チヅルは道場の跡継ぎを期待されるがその日見たバレエに魅入られ薙刀を披露した後のステージで見様見真似で踊ってみたところをフジコに見られてしまう。時を経てフジコは商人の叔父を巻き込みパリで画家を目指すことになるがちょっとした事件に巻き込まれた際に助けてくれた人があのチヅルだと気づき意気投合。やりたいことをやるフジコに導かれるようにチヅルはバレエを習い始めるが、という物語。子供向けアニメだと思うし基本的に上手く行き過ぎではあるけど第一次大戦直前から戦時下への時代の空気や当時の女性の扱われ方、パリで出会う元バレリーナのロシア人オルガとその息子ルスラン、オペラ座付属バレエ団の同期たちの境遇、ところどころに生きることのままならなさを見せられるため単に「イイハナシダナー」とはさせないのは制作陣の矜持なのかもしれない。東西のリズムの取り方(表拍、裏拍)のやり取りは映画「スウィングガールズ」を思い出してほっこり。本作鑑賞中に「ジャズやるべ!」と叫びたくなるなど。このリズムの指摘をしたライバルのマチルダは裏人気投票で1位になりそう。本作のクライマックスにオペラ座でのバレエシーンがあるんだけどオペラ座の内観の作画がそれまでとは桁違いで思わず声が出そうになってしまった。できれば大きなスクリーンんで見てほしい。オペラ座に行ったことがある人は驚くんじゃないだろうか。私もいつか行ってみたい。エンドロールの絵というか作中のフジコの絵は誰が描いてるんだろう。バレエ鑑賞人口が増えたらいいな。でも「ジゼル」は胸糞すぎて一度見たきりです。

 

24. ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編

2024年の前作の続編です。冒頭のダイジェストで「こんなんあったっけ?」と思いながらも映画を見てもすぐに忘れていまう私のことなのでそのうち思い出すだろうと思ってたんだけどやっぱりなんかおかしくて鑑賞後に調べたら前作と本作の間にWOWOWのドラマが挟まってるらしく本作はその続編だとか。そりゃ知らんことあるわな! こういうやりかた良くないよ! まぁいいか。(無知のグルメいいよね)冒頭いきなりガチムチパンツレスリングが始まってワロタ。ラッコの肉を煮込むと媚薬成分が香るのはマジなんすかね。本作のミッションは網走監獄に収監されているのっぺらぼうという人物から金塊の謎を聞き出すこと。さらにのっぺらぼうがアシリパの父なのか確かめること。ただし金塊を追う者=のっぺらぼうを追う者というわけで網走監獄で杉本たちと土方たちと鶴見たちが鉢合わせてドッタンバッタン大騒ぎ。キロランケの策略でのっぺらぼうは死んでしまい杉本と谷垣とインカラマッも……という物語。前作は思っていた以上に面白かった記憶があるんだけど本作は若干の乗り切れなさがあったように感じる。まあWOWOWを挟んだ部分のキャラがわからんのもあるしね。いきなり岸田今日子みたいな女が出てきて誰だよと。インカラマッのことです。盲目盗賊の都丹庵士はおもしろいので今後も出てきてほしい。看守として潜入しようとしたら秒でバレたあいつ(宇佐美だっけ?)もおもろいので次回も期待。監獄襲撃を新月の夜にしたのに明るいのは映画だから仕方ないけどもう少しこうなんとかならないものか。

 

25. カミング・ホーム

休日前の夜にツイッターで「宇宙人」というツイートを見かけてしまったので即ポチッとして観てきました。この日はプロジェクト・ヘイル・メアリーの公開日でもありますがまさかこんなファーストコンタクト物の傑作が同時公開されるなんておもしろすぎる。娘と息子が独り立ちしてペンシルベニアで独りで暮らすミルトンはある日裏庭にUFOが墜落して初めは恐れるが出てきた宇宙人が寒そうにしていたのでとりあえず家に入れてあげる優しい爺さんです。町の議会で市民の提案をするミルトンは毎度同じ話をしておりさらにUFOが墜落したなどと話してしまうため周囲から生暖かい目で見られることに。実際認知症の初期症状が見られるが突然やってきたエイリアンに一方的に話しかけることで活力がうまれる様子はペットセラピーのよう。ひょんなことこらサンディとジョイスにエイリアンのことがバレてしまい3人の秘密になるが三者三様それぞれ老いと孤独と向き合う中でエイリアンとの交流?が日常を彩るようになる。サンディが自宅で強盗に襲われた時にエイリアンがその状況を遠隔察知して強盗犯の頭を吹き飛ばしてサンディを助けたことにより警察が強盗犯のありえない状態に訝しむ。その頃政府は秘密裏に墜落したUFOを捜索しており……という物語。ほっこりエイリアンかと思いきやそれなりの能力も持っていたりと謎めくが親切は恩義は理解できるらしく3人の老人と奇妙な絆がうまれるのが沁みる。UFOの燃料が🐱なのはワロタ。エイリアンはりんご鹿食べないので死神と同族なのかもしれない。ラスト、かつてミルトンが家に入るように言ったときの身振りを真似てUFOへ誘うエイリアンにミルトンはどう決断するのかは見てのお楽しみ。認知症が進行するミルトンはこれから少しずついろんなことを忘れていくけれどエイリアンのことは忘れないのだと思う。なおエイリアンにジュールズと名付けたサンディ、その名を聞いてジョイスが「いや、どう見てもゲイリーかナオミって顔でしょ」とか言っててワロタ。あるよねそういうの。私の高校時代の英語教師はそういう理由でマンゾウと呼ばれてました。

 

26. プロジェクト・ヘイル・メアリー

公開前に小説を読み終わりました! というわけで長らく話題だった本作がようやく公開されました。太陽エネルギーが徐々に弱まっていることがわかりこのままだと地球は冷えて30年後には今の人口の半分が死ぬという事態に直面した人類は他の恒星系でも同事象が発生している中で唯一無事な恒星タウセチを発見したため恒星間宇宙船ヘイルメアリー号で現地に赴き原因解明するプロジェクトを発足して世界中から一流の科学者を集めたがかつて「生命に水は必須ではない」という主張でアカデミアから追放され今は中学校教師のグレースにも声がかかる。不慮の事故により死んだ搭乗者のかわりに片道切符のヘイルメアリー号に乗せられたグレースが目覚めたら記憶を失っており目の前の状況をひとつずつ分析して自分がなぜここにいるのかを少しずつ思い出していく。という物語です。原作が上下巻で長いのであらすじも長くなる。ここまでだと地球を救うための特攻隊SFという感じでありがちだけどグレースが自分は何者でここにいる理由を少しずつ思い出す過程でもしっかり科学されているのでワクワクが止まらない。というのは原作の話で映画では割とあっさりしています。雑語りで怒られそうだけど、原作は科学・ファーストコンタクト・バディ、という要素のバランスが絶妙でそこが面白さでもあったけど、映画はそこから科学をバッサリ切ってファーストコンタクト・バディの比率を高めたかたちでした。科学的な理論に基づく描写ではあるけど科学的な行動つまり仮説検証の過程を描くと2〜3時間では収まらないのでしかたない。なお個人的にはファーストコンタクトも期待してなかったので原作でその場面を読んだときに「あーそっちかー……」となりましたが結果的にめちゃくちゃ楽しんだのでOKです。と、サクッとファーストコンタクトと書いてしまったけどこいつが世界中を席巻するほどの良キャラなのは既にご存知かと。期待してなかったとはいえ私もやられました。傑作「三体」では暗黒森林理論という「見つかったら殺られる。見つかるな。もしくは殺られる前に殺る」という物騒な宇宙観でビビらされあのスティーブン・ホーキングも同様の警告をする中で今回のコンタクト相手のフレンドリーさといったらもうね。異なる環境で進化した2種が互いの不足を補いながら試行錯誤する様子はページをめくる手が止まら終始ワクワクしながら読めました。と、結局原作の感想になりがちですが映像体験としての映画は間違いなく観てよかった。もうひとつ原作にないシーンでストラットのカラオケはベタだけどじんわりきた。アストロファージの海や原作にはない異星人の宇宙船内は必見ですね。本作で私はIMAXレーザーGTデビューしましたがデカいスクリーン最高。もう一度観たいというよりもう一度読みたい作品ですね。最後にキンドルでハイライトした部分からお気に入りをピックアップしました。

  • そもそも尻に管を入れられた状態で心地よい瞬間なんてあるのか?
  • ぼくも何度もひとりで寝る。悲しい、悲しい、悲しい。
  • 最終期限が引き起こす品質問題──全銀河系共通の課題だ
  • 生物学的。下品
  • クレイジー。人間はクレイジー
  • 順調です、おかげさまで。シャピロ博士とわたしは性的関係を開始しました
  • わたしたちは非常にアクティブな性的遭遇を楽しんでいます
  • マーティン、この授業のあと、つぎの訓練までのあいだが一五分あるの。廊下の奥のトイレで落ち合ってセックスしたいんだけど
  • 彼は五肢をぜんぶ身体の下に丸めこんで、ぶるぶる震えている。
  • きみはぼくに会いたくなる、質問? ぼくはきみに会いたくなる。きみは友だち
  • 「 さよなら、友、グレース」ぼくは静かに手をふる。「さよなら、友、ロッキー」
  • いまいくからな、 バディ。
  • ほんのいくつかの音符が奏でる音を聞いて、こんなにしあわせを感じたことはない!
  • 一二人の子どもたちが鉤爪を上げる。

 

27. マーティ・シュプリーム

なんとなくスルーかなと思っていたところに面白いというツイートが流れてきたので観てみたらとても面白かったです。1952年のニューヨークの叔父の靴屋で働くマーティは競合卓球選手だがマイナースポーツで遊びの「ピンポン」と思われているアメリカでは知名度も無く海外遠征費用は自腹なので常に金の工面をしており自身が働く靴屋の従業員を銃で脅して金庫から金を奪い卓球連盟名義で高級ホテルで豪遊して1500ドルの罰金と世界選手権出場停止を課され長年の友人ディオンを利用して小馬鹿にして幼馴染の既婚者レイチェルと靴屋の倉庫でヤリまくり妊娠したら「俺は小便を止めて鍛えてるから俺の子じゃない」と吐き捨てガソリンスタンドで泥棒して小汚い爺さんに面倒を頼まれた犬を置いてきぼりにして大女優ケイとヤリまくっておきながらケイを侮辱してそのうえ資金援助を頼み貰ったネックレスを公園ファックを咎めた警察官に取られもう1個くれとせがみケイの夫を侮辱したら辱めを受けるというどこから見てもクソカス野郎の物語です。マジでクズすぎるマーティなんだけどあまりにクズすぎてマジでおもろい。クズエピソードで畳み掛けられると笑うしかない。肝心の卓球はライバルが日本人選手で映画の終盤は舞台も日本になるため半ば日本映画といっても過言ではないしそこをPRすればもっと集客できるんじゃね?と思わなくもない。ラストは自分の子を見て泣き改心したように見えるけど人間そうそう簡単に変われないのでまあその後も地獄だろうなと。個人的には大女優ケイ役のグウィネス・パルトロウが最高でしたね。色狂いババアはエロい。ありがとう。

 

ではまた4月分で。