駆け出し映像作家・三月(みつき)に「バンドのMVを撮ってほしい」と故郷、福岡からDMが届く。数年ぶりの帰郷を果たした彼女を待っていたのは、ボーカルの失踪ですっかり活動停止中、ほぼほぼ解散状態のおじさんバンド。撮影など叶うはずもなく、空中分解真っ只中のメンバーを説得するため福岡の街を奔走するはめに。すっかり音楽から離れ、時代からも取り残された曲者のおじさん達。彼らを追いかけるうち、気づけば三月自身もこの街に置きっぱなしだった自分の過去に追いかけられていて。才能ある誰かや、自分より優れた何かとか、地方とか都会とか、ずっと見上げてた人たちの群像コメディ。
アイドルグループを卒業してマルチクリエイターになります宣言をした三月に舞い込む仕事はゼロ。数カ月経ってもゼロ。そんな中でようやく届くメールにはバンドのMV撮影の依頼。既に解散したバンド・ボイジャーズのメンバーは今はそれぞれの道で働くただのおっさん。ボイジャーズの再結集、再結成までのドキュメンタリーをそのままMVにと企む三月に敏腕?マネージャー、三月の父と妹、かつてのボイジャーズと関わりのあった人々がそれぞれの思いを誰かに託して辿り着くのはどこなのか。青春回顧物の定番スタイルで誰が観ても楽しめるのはさすがですね。三月役がなんとなく見覚えあると思ったら元HKTの人だとか。アイドルあがりの舞台出演なんて(偏見)というのも今は昔。最近はちゃんと上手いから舞台趣味マンとしてはありがたい。三月の行動は基本的に逃げと野次馬根性なんだけどそれで嫌われないタイプっているよねー。バンド物でもあるので演奏シーンもあるかと思ったけどそこは当て振りでした。最終的な種明かしは消えたボーカル柳の仕込みかと思いきや完全なファンダジーだったので多少のモヤモヤはあったものの私も元バンドマン現サラリーマンなのでベタな物語で楽しめてしまうチョロいおっさんなのです。中終盤に三月の父の病気エピソードがあるんだけどこの部分だけ少し浮いてる気がしてしまうなど。そこだけ切り取るとイイハナシダナーって感じだけど他との繋がりが薄くてね。まあでもむしろ現実の世界は脈絡ないものだし物語に意味を見出そうとする悪い癖かもしれない。本作の舞台が福岡で出てくる地名がどれも懐かしくなりました。というのも私はかつて1年くらい福岡の薬院に住んでいたので。たかが1年ですがとても好きな街になったしそこそこ思い出もあるのでまた行きたくなりました。グッズのボイジャーズ架空ツアーTを買おうか迷ったけど最近Tシャツ買いすぎなので我慢しました。俺えらい!