■作・演出
井上瑠菜
■出演
小林桃香(露と枕)、村上愛梨(露と枕)、榊原あみ、大塚遊馬、越前屋由隆、野村亮太(やまだのむら/room42)、谷澤翼(ニサンカタンソ)、松本知道(オフワンズ)、幡美優、齊藤由佳、丸本陽子、横手慎太郎(シンクロ少女)
■会場
下北沢「劇」小劇場
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―海や死にする 死ぬれこそ
とある海沿いの療養施設に、七人の若者が入所してきた。
彼らは山奥の村で、「神さま」として生活を送っていたらしい。老樹や巨岩と打ち解け合い、鳥獣や風の声を聞き、村人の懺悔を許すことが生業であった。村人はというと、神に許されることだけが至上命題であったから、困窮していく自給自足の生活の中で私刑を与え合い、時に罰された者の血肉を糧食の足しにしながら、いつまでも若い彼らに許しを乞うていたという。
七人を社会復帰させ、その尊厳を取り戻すため、施設に与えられた期間は一年ほどしかない。何も変わらないのではとの懸念もあったが、彼らは初日から聞き分けが良く、常に笑顔だった。警戒心の強い者もいたものの、概ねはゆっくりと平穏な暮らしに慣れていった。
このまま何事もなく、一年が過ぎていくかもしれないとさえ思っていた。海に行きたがった一人に噛まれるまでは。
これは、食人村で誕生した七柱の神を人間に堕とす、許しと弔いの記録。あるいは、海と過ごした明暮のこと。
たぶんどこかでこのフライヤーをチラ見したんだと思う。で、以前観たモミジノハナ公演に露と枕の奥泉氏が出ていたのを思い出して、良い役者だった記憶があったので本公演も観てみるかということでポチッとしたような。で、蓋を開けてみると奥泉氏は退団してました。そんなこともあるよね。まあきっかけは何であれ、観てよかったと思える作品でした。某事件を発端として宗教二世問題が注目される現在、なかなか扱いづらいテーマで書かれた作品はとても見ごたえがありました。実社会では当該宗教団体を熟知して洗脳状態を解く支援者が(十分な数とはいえないが)いる一方で、本作の支援者たちはそこまで団体のことを熟知できていないメンバーも多いため、観客は支援者たちのスタンスに「ズレ」を感じ続けそれがストレスになる。団体の教義や行動様式は実社会では通用しないものばかりなのでどちらかといえば支援者側に肩入れしそうなものだが、その「ズレ」がつきまとうのでどっちつかずの不安定な状態で舞台は進む。支援者たちが言う「元気、正しい、間違い」の空回りっぷり、寄り添っているようでいて結局は価値観の強制(矯正)でしかないのでは、などなど。このままこの作品が終わったらさすがに消化不良だったが、最後に支援者の天野(越前屋由隆)がサラッとそこに触れたのでモヤモヤは軽減された。支援者の豊川(小林桃香)の過去の掘り下げはもう少し欲しかった気もするが、約2時間に収めるにはさすがに難しいか。団体の性質はだいぶ異なるが映画「星の子」は同様のテーマの良作なので合わせて観てもいいかもしれない。しかしこれだけ素晴らしい作品がたった数百人にしか届かないというのが殘念だのう。と思ったら配信もあるようです。とはいえ生モノなので今後はより大きな舞台での公演を期待したい。
【無事終演🌊】
— 露と枕 (@tsuyu_makura) 2023年4月16日
露と枕 Vol.8『わたつうみ』
無事、劇場での全9ステージが終了しました。
ご来場、誠にありがとうございました。
配信版は4月19日より視聴開始!https://t.co/UriSxIvpJb
今後とも、露と枕をどうぞよろしくお願いいたします。#露と枕#わたつうみ pic.twitter.com/bZfGrUpRVb
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