■脚本・演出
山崎彬
■出演
植田順平、潮みか、香月ハル、中西柚貴、畑中華香、山崎彬、ユガミノーマル、池岡亮介、今村美歩、納谷健、齋藤明里、瀬安勇志、端栞里
■会場
本多劇場
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ゆっくり逃げれば誰にもバレない———
逃げているのは自分ひとりだけだとずっと思っていた万千田(マチダ)マチルダは、あるとき気がついた。
「アタシ以外のみんなも、まあまあ逃げている……!!」
世界のドコカでナニカから逃げている、アタシと同じようなダレカ。
一度も出会うことのなかったマチルダとダレカたちだったが、やがて逃げゆく先々で自分たちだけがわかるメッセージを残しあうようになる。いつからかマチルダとダレカたちは、自らを “ 逃避奇行クラブ ” と名乗り始める。
悪い芝居記念すべき30回目の本公演は、現実逃避者たちによるエキセントリップロードムービー。
さあ、劇場まで、逃げておいで。
十年来の強火オタクとしてお話させていただいた嬉し恥ずかしシャカリキ対談はこちらでコロンブス。
— ズイショ (@zuiji_zuisho) 2023年1月23日
悪い芝居が気になる方もズイショの好き好みが好きな人も好きじゃない人も是非ともご一読いただければ。 https://t.co/XmNYDj6HPP
このツイートと対談記事に影響されて悪い芝居の「逃避奇行クラブ」を観てきました。悪い芝居初体験です。以前にもズイショ氏の演劇関係のツイートを見かけた気はするんだけど特に気に留めず流していましたが対談てどういうこと? と記事を読んでみたら悪い芝居の初期からずっと観続けてきた古参ファンでしかもズイショ氏が演劇をやっていたことも初めて知るなど俄然興味が湧いてしまい即ポチッとな。で、めちゃくちゃ面白かった。内容は上記あらすじの通り子供の逃げ場・大人の逃げ場といった話でググれば感想書いてる人がいくらでもいそうなのでそれは置いておこう。ただ一点これは完全にネタバレなので嫌な人は読まないでほしいんだけどいわゆる葉桜的叙述を文章でなく眼の前でやられてちょっとテンション上がった。観ながら時系列ちょっと混乱してきたぞと思ってたらのそれだったので。文章だとよくある(よくはない)のであーこのパターンねくらいなんだけど生身の人間が見えてしまっている舞台でやるのは面白い。で、かつてみんなで遊んだ逃避奇島も今は昔、大人になった彼らの逃げ場、新逃避奇島はバーチャル(最近はメタバースとか言うの?)だったと。劇中にメタ演劇ネタというか「演劇や劇場が良いって劇場で言ってもそりゃ詰んでるわな」みたいな台詞があったり、逃げ場がバーチャルだったり、どうもこの作品は演劇界の閉塞感のことを言ってるっぽいんだよね。脚本演出出演の山崎彬氏にとっての逃げ場が劇場であると。知らんけど。演劇界の閉塞感てタイミング的に「はいはいコロナだしね」と外野には思われそうだけどそこそこ長いこと劇場に通ってる者としてはコロナ前から感じているというか。楽しませてもらっている身としては界隈を盛り上げたい気持ちはあるんだけどどうすれば客が増えるのかとか全然わからん。まず演劇未体験者に演劇をすすめるのが難しい。映画なら軽く誘ったり誘われたりがあるんだろうけど演劇はそれがない。やってる人はいるんだろうけど私はそれができなくてねえ。気楽じゃないんだよな。金も時間もかかるし初めて観る作品でその後の演劇人生(観るか・二度と観ないか)が決まりがちというか。私の初めてはたぶん大当たりだったので運が良かった。劇団単独で見れば徐々に集客が増えていても蓋を開けてみれば従来からの演劇ファンが演劇界隈でぐるぐる回ってるだけだったりして。で、本多劇場で一週間公演という界隈では成功者と呼べる人がこんなストレートに演劇界の閉塞感を表現するのかと。さっきから閉塞感を連呼して本当に失礼な客なんだけど山崎彬氏がこの現状をネガティブに捉えているのかそれでもポジティブに捉えてるのかが気になるんだよね。劇中では最後にいろいろあって子供の頃の逃避奇島にみんな集まって解散するときに「じゃあまたここで」「いやバーチャルでええやろ」みたいな会話があった。リアルで集まるのは面倒だしバーチャルはラクってのもあるんだけど物語を通して見るともはやリアルに逃げ場は無いように聞こえるというか。まだバーチャル(劇場)があるじゃないか! と、もうバーチャル(劇場)しかない…… だと前者は現状をポジティブに肯定しているようで、後者だと悲観しているけど演劇の他にやりたいこと出来ることがないからこれしかできないみたいにも聞こえるし。で、今回の公演期間では各回の終演後にゲストを呼んで対談があるんですがこの回はシンガーソングライターのアマイワナ氏と山崎彬氏の対談でした。その中でアマイワナ氏が曲作りについて「ネガティブなこともポップに表現したい」と話したときに山崎彬氏が大きくうなずいていたんですよ。その反応を見て「てことはやっぱり本作は悲観して作ったんかなあ」と思ったり。まあね、演劇界の現状に対するスタンスについてだらだら書いてるけど身も蓋もないこと言っちゃうと客としては作り手がポジティブでもネガティブでも面白けりゃいいんすよ。ネガティブなほうが面白いものを作れるならネガティブなままでいてくれてもいいんだけどそんなのメンタルきついしやっぱりみんな幸せでいたいじゃん。金払ってる時点で客としては貢献してるんだけどその先の演劇界の盛り上がりに何か出来ることがあればしたいと思うじゃん。だったらこんなこと書いてないで単純に作品の面白さを書けよって話なんだけど。こんなん読んだところでひとりも客は増えねえし。そういう意味では少なくとも客をひとり増やしたズイショ氏は立派なもんだ。(私は演劇界をぐるぐる回ってるだけですが←おい)
そうそう、最後に役者について。悪い芝居メンバーも客演も誰ひとり「うーん……」て人はいなくて全員素晴らしくてその中でも特に今村美歩(大人マチルダ)と端栞里(子供マチルダ)が強烈でしたね。まあそういう役どころってのはあるんだけどそれを差し引いても凄かった。
あと対談ゲストのアマイワナ氏。劇中の「夢の中では視力が回復する」みたいな台詞に自身の歌詞「夢であなたがぼやけないようにコンタクトつけて眠りたい」という歌詞が影響してるはず!(ドヤ顔) みたいに言ってて影響してるかどうかは置いといてこの歌詞ロマンチックでとても好き。「夢であなたがぼやけないようにコンタクトつけて眠りたい」いいねえ。 ※危険なので良い子は外して寝ましょう
■悪い芝居 公式サイト
■アマイワナ 公式サイト
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