ネットに影響される人の日記

ネットに影響される人の日記

影響されたり、観たり、聴いたり、食ったり。

20. 梅雨の走りの本谷有希子『マイ・イベント』

www.motoyayukiko.com

「誰もおおっぴらには言わないけど、他の人を助ける余裕がない時は、自分の都合を優先させていいことになってるんだ」

 

巨大台風が近づきつつある川沿いのマンションに住む渇幸・張美夫妻。防災への意識の高い渇幸は、異常なまでに備えられた防災グッズや食料の備蓄をせっせと確認し、万事に備えて最上階の部屋を購入した自身を全肯定している。妻の張美もまた、過剰な買い占めをする夫に近所の噂が立つのを嫌いながらも、基本的には渇幸の選民思想には同調している。そんな夫婦の部屋へ、河川の氾濫を恐れた1階住民の大家族が押しかけて来て―――。

 

■作・演出
本谷有希子
■出演
黒田大輔安藤玉恵
■会場
小竹向原 SAi STUDIO コモネA

 

好きな役者である黒田大輔安藤玉恵の二人舞台、その作演出が本谷有希子、行ったことのない会場、こりゃ行くしかないでしょということでチケット購入。公演前日に会場への行き方を調べて、まだまだコロナ中止もあり得るので公式をチェック。「公演中止のお知らせ」にファッキンコロナと毒づきながらクリックするとコロナではないと。以下全文転載。

 

本谷有希子よりお客様へ

この一ヶ月間、これ以上ないほど必死に、俳優、スタッフ達と稽古を重ねて来ました。

ですが、私は、黒田大輔さんと安藤玉恵さんの「マイ・イベント」を完成させることができませんでした。

今回の公演中止は、私の至らなさが招いたものです。

楽しみに待っていて下さった方々、俳優を始め、力を貸して下さった方々、本当に申し訳ありませんでした。

三人で造る舞台の上演が叶わなくなった今、演出家として、人として、どういう形で責任を取るべきかを考え続けました。そして、残された自分の身ひとつで「マイ・イベント」を創作し、どんな形にしてでも上演することだと結論致しました。

劇場に足を運んでくれようとしていたお客様や、支えてくれた俳優やスタッフ達、そして、芝居そのものに、誠実に向き合うことだけを考えて出した答えです。

この先も創作活動を続けていくために、私自身にとって、今、どうしても必要な判断でした。

残された時間、全身全霊で、本谷有希子の「マイ・イベント」に臨みます。

よろしくお願い致します。

2022年 6月12日 本谷有希子

 

----------

 

この度は、初日直前での公演中止という事態を招いたことを、公演主催として、お客様、公演関係者の皆様に重ねてお詫び申し上げます。

「梅雨の走りの本谷有希子」は、黒田大輔さん、安藤玉恵さん、本谷有希子の3名で小説「マイイベント」を演劇として生み出す為のユニットでありました。しかしながら、様々な理由でその創作を続行することが難しくなり、演出家含めカンパニー内であらゆる可能性を模索いたしましたが、主催する立場として当初の形での上演を中止する判断を下すに至りました。

足をお運びくださる予定だったお客様、またキャストのお二人をはじめ公演関係者の皆様には、改めまして深くお詫び申し上げます。

公演中止後、本谷有希子より、今できる限りの別形態での上演の申し出を受けました。我々としましては、本谷の演出家として責任を取りたいという意思を尊重し、「本谷有希子の『マイ・イベント』」を下記の通りに上演することといたしました。さらなるご迷惑をおかけすることとは重々承知いたしておりますが、ご来場いただけましたら幸いでございます。

2022年 6月12日 ヴィレッヂ

 

当初はただ残念だなあという感情だったのが時間がたってだんだん腹立ってきたのでこれを書いてる。こんなネガティブ記事をわざわざ書く私もクソだけどそれ以上のクソに対しては我慢できなかった。「自分の至らなさ」で全公演中止まではとても残念だけどそういうこともあるかなあと思えた。創作者たちのそうしたこだわりの結果を日頃から楽しませてもらっている消費者なので。今回は残念だけど次回は期待したいという気持ちにはなる。ところがその後に「どういう形で責任を取るべきかを考え続けた」結果に出した結論が「残された自分の身ひとつで上演すること」だと。当初18日間23公演が予定されていたものを3日間4公演にすると。そこに黒田大輔安藤玉恵はいない。いわゆる「自作自演」になると。チケットは一旦すべて払い戻しとして新たに売ると。本谷有希子が言う責任が誰に対する何に対するものなのか理解できない。当初の公演を楽しみにしてチケットを買いスケジュールを調整した客に対する責任が一切見当たらない。全員観れないならわかる。「チケット再取得できた一部の客」と「いち早く騒動を聞きつけた野次馬」だけに対して果たす責任て何なんですかね。まあ正直言うと観れた人に対する嫉妬はありますよ。こんなレアなトラブルに立ち会えたのは羨ましい。それはそれとして、単に自分がスッキリしたいだけのアリバイ作りを責任と呼ぶのは笑うとこなんですかね。全然笑えないけど。

 

消費することしかできない私はすべての創作者に対して感謝しかない、ということは改めて言っておく。

 

と、ここまで書いてプレビューで確認して思ったんだけど引用したあらすじ冒頭の「誰もおおっぴらには言わないけど、他の人を助ける余裕がない時は、自分の都合を優先させていいことになってるんだ」を実演した壮大な釣りだったらどうしよう。まあクソにはかわりないが。

 

公演前インタビュー

engekisengen.com

 

★今年の観劇一覧

htnmiki.hatenablog.com