ネットに影響される人の日記

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影響されたり、観たり、聴いたり、食ったり。

19. 劇団フルタ丸 20周年記念公演「すべてセリフのはずだった」

furutamaru.com

セリフという麻薬

下北沢に越して来た異母四姉妹。

母が異なる四人は消息が分からなくなった一人の父親を探していた。

手掛かりは父親との記憶が残る下北沢に現われるかもしれないという予感だけ。

街を徘徊する四姉妹の姿が話題になり始めた頃、映像制作会社が声を掛ける。

彼女達がテレビに出ることを了承したのは父親を探すためだったし、制作会社が四姉妹を追いかけたのは傾いた会社を立て直すためだった。

でも、もうそんなことは誰も何も憶えていない。

 

■作・演出
フルタジュン
■出演
真帆、篠原友紀、清水洋介、フルタジュン、 大勝かおり、西川智宏、松尾英太郎、逢来りん、真白健太朗、美澄衿依
■会場
駅前劇場

 

上記あらすじの通り父親探しに役立てばと「ザ・ノンフィクション」的な番組に出演した四姉妹。次女の彼氏という想定外の飛び道具で結果的に好評ではあったものの父の手がかりは見つからず。上層部は続編を期待するが現場感覚ではこの四姉妹からこれ以上のものは出てこないことがわかるので躊躇う。しかしそこはサラリーマン。やるしかない。創り上げてでも。一方、離婚して娘に会えない番組Pは元妻の再婚相手に娘の情報提供を依頼し再婚相手も応じるが、実は再婚相手も既に離婚しており。父を探す四姉妹、娘に会いたい番組P、巻き込まれる関係者、勢ぞろいして創り上げられる第二弾。台本通りに喋る四姉妹を撮るカメラ。あるとき台本のセリフが本心とリンクしていることに気づき動揺する。本心をさらけ出すのは抵抗があるが「台本通り」というていならいける。そうして第二弾のクライマックス、結局父との再会は果たせず「父探しの同居による急造四姉妹」は解消することになるがラストシーンで四女が台本にない言葉を発する。すべてセリフのはずだったのに……

 

いやー今回もおもしろかったー。毎度素晴らしい。ありそうで無さそうな設定にわりと強引な笑いで引き込んでおいて一気に畳み込んで回収するのがめちゃくちゃうまい。フルタジュンの作品は演劇に馴染みがない人がイメージしがちな「演劇的」な色がわりと薄くてそういう人でも抵抗なく楽しめると思うのでもっと広がってほしいんだよなあ。ただ本人にデカい舞台に対する思いがあるのかないのか。比較すると色々言われそうだからアレだけど例えばゴジゲンの松居大悟みたいにテレビドラマの脚本とか。

 

私のアンテナ感度がアレだからだと思うが今回も知らない役者たちが素晴らしかった。大勝かおり(長女)、無駄に強い責任感で袋小路の状態のくせに好奇心には勝てない一面を好演していた。逢来りん(四女)、無関心でその日暮らし(におっさん世代には見えてしまう)の典型。この人が最後にひっくり返すことに意味がある。真白健太朗(派遣の番組制作スタッフ)、ドキュメンタリー制作ワナビーあるあるな意識高い系が「やらせ」に触れるとき、そして四女への対面インタビューが印象的だった。美澄衿依(番組AP)、自分には何もないことがわかっているからAPという肩書だけが頼り。空回りっぷりや自己肯定感の低さによる年上男性依存とか見ていて痛いんだけど本作のMVPは美澄衿依でいいのではと思うくらいのあるある感を好演。

 

西川智宏(番組P)、松尾英太郎(実力派D)はもはや准劇団員と言っても差し支えないのでは。←失敬 というくらいの安心感ですね。ベクトルは違えど「由宇子の天秤」とか思い出すレベルだと思う。

 

劇団員(真帆、篠原友紀、清水洋介、フルタジュン)は言うまでもないけどひとつだけ。フルタジュン(番組Pの元妻の再婚相手)の車のシーンは大爆笑だったなー。ああいうすっとぼけた役がハマりすぎ。終演後の挨拶で他の人が話しているときにわりと号泣していた真帆。こんな状況でも客席減らさず全公演やり切れることの意味は大きいよねえ。

 

というわけで今回も大満足の劇団フルタ丸。次回はいつですか?

 

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